安浪:それはありますね。大事なのは、「前に進んでいる」という感じをどうやって持たせるか、だと思います。その感覚があれば、詰め込みの勉強であろうが、なかろうが楽しくなります。

矢萩:イメージ的には、自転車に乗れるまでは後ろで支えてあげて、だんだん手を離す感じでしょうか。「一緒にやってみようか」と寄り添ってあげたり、「ここは半分わかればいいよ」と言ってあげたり。楽しく「成長」に導くためには、完璧を求めすぎないことが大事です。

矢萩:中学受験で出てくる内容は、実は中学校の教科書で出てくるものも多いんです。なので、中学受験でやった知識がそのまま高校受験で使えるものもあります。ですから、まずは「中学受験を失敗した」と思うのではなく、「成長の過程の中で中学受験という経験をした」と考えてほしいですね。今まで積み重ねてきたものを次に活かしていこう、という発想を、まずもってほしいです。

安浪:中学受験、おつかれさまでした。膨大な時間を費やして勉強してきたと思うので、きっと勉強体力はついていると思うのです。これはすごいこと。次にやることは学習習慣をキープすることですね。それも親から言われてやるのではない、「学習的自立」が大事です。公立中学なら春休みの宿題もないと思うので、本屋さんに行って参考書をいろいろ見て、自分で選んで少しだけやってみるのもいいと思います。自分で選ぶ、やってみる。そういった力をつけたら、中学生活は鬼に金棒ですよ。

矢萩:あまり「中学受験をしないなら、何をすべきか」と言った「べき論」で考えないほうがいいと思います。基本は、その子の発達段階に合わせ、目の前にあることを楽しく集中してやっていく環境を作ってあげることが一番大切です。そもそも中学受験の勉強って「目的ありき」の勉強なんです。そうではなく、「無目的な体験」というのでしょうか。だんごむしや電車を見ているだけでもいい。目的はなくても、そこにあることに集中する経験をたくさんしたほうがいいと思います。とくに低学年のときはそうですね。どうしてかというと、目的ありきのことばかりやっていると、価値観が固まってしまって、成長してから窮屈な思いすることが多いからです。

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