人付き合いが苦手な40代の父親。息子の小学校入学を前に、妻から「父親も式典に参加すべきだ」と言われて憂鬱な気持ちになっています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:6歳の息子を持つ40代の父親】

4月に小学校入学を控えた息子(6歳)を持つ40代の父親です。どうも最近の入学式には父親も出席するケースが多いようです(8割という情報も)。自分が子どもだった頃は、父親は送迎のみが当たり前だったのに、妻からは「参加しないのはおかしい」と言われています。私はもともと人付き合いが苦手なうえ、普段はテレワークなので晴れの日にふさわしいスーツもないし、知り合いもいないので、居心地が悪いのが目に見えており、避けたいのが本音です。平日に仕事を休んででも、父親は入学式に参加すべきでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子貢、告朔(こくさく)のき羊(よう)を去らんと欲す。子曰(い)わく、賜(し)や、爾(なんじ)はその羊を愛す。我れは其の礼を愛す」(八イツ第三)

・「子、四(し)を絶つ。意(い)毋(な)く、必(ひつ)毋く、固に毋く、我が毋し」(子罕第九)

【現代語訳】

・弟子の子貢が「毎月1日に行われる祭事では、先祖の廟に羊をお供えする儀式だけが残っているが無駄だからやめよう」と提案したところ、孔子はこう答えた。

「子貢よ、お前は羊を惜しむだろうが、私は無駄を省いて伝統が失われることを惜しむ」

・孔子には、四つのことがなかった。第一に「主観的な恣意」、第二に「無理押し」、第三に「固執する心」、第四に「自分のことだけを考える執着」。

【解説】

 お答えします。相談者さんは、心を入れ替えてください。自分がこれから小学校に入学する6歳の子どもだとしたらどう感じますか。両親がそろって自分の小学校入学を心からうれしく思ってくれていることを感じたら、ワクワクした気持ちになりませんか。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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