「不登校は誰にでも起こり得る」と話すのは、臨床心理士の南谷則子さんです。

「不登校になるきっかけは多岐にわたります。だからこそ、特別な子に起こる問題ではありません。多様な要因が複雑に絡み合い、結果として不登校という状態になっている。『学校に行かない』ということは、ストレスに対処しようとする行動の一つに過ぎないのです」(南谷さん)

 しかし、理由もなく学校を休みたがる子どもに親は困惑するもの。

「学校に行きたくない」という言葉が深刻なものなのか、一過性のものなのか。その見極めは?

「親としての直感を信じてみてください。子どもを見て、『いつもと違う』と感じたら、その直感どおり何かが起きているはずです。休む・休まないの判断が難しいときは、休ませてみるのがいいと思います。『ときには休んで、手を抜いても大丈夫!』と、休み方や力の抜き方を教えてあげることで、社会に出ても自分らしく生きていけるのではないかと思います」(石井さん)

 子どもに見られる代表的SOSを知っておくことも大事です。

子どものSOSサイン 5つの前兆
子どものSOSサイン 5つの前兆

■親にグチグチ言えるのは信頼関係があるからこそ

「学校に行くことが当たり前」と思っていると、子どものSOSに気づきにくいかもしれません。

「つらそうだなと感じたら、心配しているということを伝え、『何か不安なことはある?』と率直に聞いてみてほしい」と石井さん。「学校がだるい」とグチグチ言ってきたら、「だるいよね」と共感する言葉が大切だと言います。「共感のふり」をするだけでもいいそう。

 アドバイスしたり、「気にしても仕方がない」と言いたくなったりしますが、それでは不安は取り除かれません。子どもの言葉をオウム返しにすることが受容のコツです。

 それでも5つのSOSサイン(図参照)が続くようであれば、大きな不安やストレスを抱えている可能性があります。早めに気づき、普段から「話を聞く」姿勢が親子の信頼関係と心のケアにつながります。

(取材・文/高橋亜矢子)

石井志昴さん
石井志昴さん

〇石井志昂(いしい・しこう)さん/「不登校新聞」編集長。中学受験を機に不登校。不登校新聞の編者として、当事者や親、識者など400人以上に取材。著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)。

南谷則子さん
南谷則子さん

〇南谷則子(みなみたに・のりこ)さん/臨床心理士、小児発達学者。公立学校でスクールカウンセラーをしながら、不登校の子どもを持つ親の支援グループプログラムに取り組む。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任研究員。

※『AERA with Kids 2022年夏号』から抜粋

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高橋亜矢子
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