■休んだ日、 家で勉強させる?
「まずは、好きなことをやらせてあげてください。親も友達とお茶したり、ドラマを見たりして好きなことを楽しむように、子どもにも好きなことをする時間は必要。その上で、学校の勉強でなくてもいいので、何かを学ぶことも大事です。読書や工作、低学年ならおままごとも立派な学び。お手伝いもいいですね。『家にいるんだから、お手伝いくらいして当然』と言いたくなる気持ちをぐっとこらえ、『ありがとう。助かったよ』と伝えると、学校に行けないことで低くなっている自己肯定感も高まります。思いきってどこかに一緒に遊びに出かけてみるのもいいと思います。せっかく休んでいるのだから、親子の時間を楽しく、充実させられるといいですね」(南谷さん)
「不登校の子どもたちが親に言われて嬉しかった言葉としてよく挙げるのは、『好きにしていいよ』です。一日中ゲームやネットを見続けていても、僕はいいと思います。不登校のころの私自身もそうだったのですが、ある日『このままではまずい』と自分で気づき、何か学び始めようとするはずです。繰り返しになりますが、まずは心の傷を回復させること。つらいままでは、何をしても前には進めません。親が『今勉強は無理』と割りきることが大事です」(石井さん)
■家でずっと一緒にいるとイライラしてしまう。
「見ないことが一番の得策です。ずっと見ないでいることはできないけれど、部屋を分けるとか極力見ないようにする。不登校の子を持つ親は本当に大変です。子どもの苦しみを丸ごと受け止める親になんて、誰もなれないですから」(石井さん)
「母親がストレスをためすぎてしまうのであれば、子どもにも少しは頑張ってもらったほうがいい。たとえママにべったりであっても、数時間離れることで取り返しのつかないようなことにはならないので安心して息抜きしてください」(南谷さん)
※記事前編<<ある日突然、不登校に…子ども自身も「行けない理由がわからない」ことも 不登校新聞編集長に聞く>>
※記事中編<<「学校に行きたくない」と言われたら? 専門家が教える、親が「やるべきこと」と「NG対応」>>
(取材・文/高橋亜矢子)
〇石井志昂(いしい・しこう)さん/「不登校新聞」編集長。中学受験を機に不登校。不登校新聞の編者として、当事者や親、識者など400人以上に取材。著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)。
〇南谷則子(みなみたに・のりこ)さん/臨床心理士、小児発達学者。公立学校でスクールカウンセラーをしながら、不登校の子どもを持つ親の支援グループプログラムに取り組む。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任研究員。
※『AERA with Kids 2022年夏号』では、このほか全部で10の悩みに対する専門家の見解を紹介しています。
朝日新聞出版