「大学は、安定的に優秀な学生を集めることができる制度として、付属校からの内部進学を受け入れています。とくに今年は、入試改革による受験者減が予想されていたことに加え、コロナ禍の影響で地方からの受験控えが起きたため、内部進学者の存在は大学にとって重宝されているのではないでしょうか。付属校の運営には人件費もかかりますが、メリットも大きいと考えて、付属校を増やしています」
一方、「付属」ではなく「系属」というかたちで既存の学校との提携を進めている大学もある。青山学院大は14年に横浜英和女学院中学高等学校(現・青山学院横浜英和中学高等学校)と系属校協定を締結。20年には横浜英和小学校も系属校となった。19年にも浦和ルーテル学院小学校・中学校・高等学校を系属校化している。横浜英和、浦和ルーテル学院は両校ともキリスト教教育を行うミッション系の学校。浦和ルーテル学院は「いずれもキリスト教信仰に基づく学校として、互いの建学の精神を尊重し、さらなる発展を期して(中略)協定を締結しました」と説明している(同学院HPから)。20年度、横浜英和からは、系属校推薦での進学者も含め53人が青山学院大に合格した。19年度の合格者12人から大きく増えている。
この例は先駆的な試みとして注目されていると、森上代表は言う。
「新しく教員を雇うのではなく、もとからある学校と協定を結び『青山学院』の看板を貸すという方式なので、コストがかからないのが利点です。実際、名前が変わったことによる影響は大きく、横浜英和と浦和ルーテル学院は系属校化以後、受験生が増えていきました。青山学院というブランド力により学校の価値が高まっていった一例です」(森上代表、以下同)
さらに、付属校や系属校ではないものの、高校のなかに特定の大学と連携したコースが設置されるケースもある。とくに関西圏ではこうしたコースを設置している高校が目立つ。たとえば大阪の帝塚山学院中学校高等学校は、07年に関西学院大学への入学をめざす「関学コース」を設置。海外研修、プレゼン大会、関西学院大付属校の生徒たちとの交流などを通じ、進学のサポートを行っている(同校HPから)。21年4月には119人が関西学院大に進学したという。
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