アルゼンチン留学から帰国したばかりの高橋新太郎くん(13)は、日本語、英語、スペイン語、イタリア語を話します。生まれた時から英語で話しかけられた新太郎くんがマルチリンガルになったのは、プロサッカー選手への夢が理由でした。「AERA English 特別号 英語に強くなる小学校選び2020」(朝日新聞出版)からお届けします。
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公園の一角に、「Turn, dribble, direct」と、英語を話しながらサッカーの練習をする日本人の親子がいる。高橋新太郎くんは「お父さんと日本語で話したことは一度もない」と話す。それに対し父の正彦さんは「今さら息子と日本語で話せと言われても恥ずかしいです」と笑う。
正彦さんもサッカー経験者で、オーストラリアに留学しており、その実体験から子どもにも英語を話させようと思った。日本にいる以上、いずれは日本語中心の生活になるため、生まれたときから意図的に英語だけで話しかけた。
その上で大事にしているのは、発音よりも何を話すかだ。
「LやRの音などは英語らしく発音するよう指導していますが、英語は世界中で話されている言語で、今やネイティブといっても国によって全く違います。ですから日本語のアクセントがあっても堂々と話せばいいと言っています」(正彦さん)
小学2年生のとき、「スペイン人コーチが来日するキャンプに行きたい」と言うと、正彦さんからテストを課された。「好きなサッカー選手は誰ですか」など200文超のスペイン語の短文リストを渡され、これをすべて英語からスペイン語に訳すというものだ。たったの6時間ですべてを覚え、正答率は96%。許可をもらい、キャンプに参加した。
「そのときはあまり話せなかったけど、そのあとも必要なときにリストを見てスペイン語を思い出して会話した。今年行ったアルゼンチン留学でペラペラに話せるようになった」と新太郎くんは振り返る。
さらに3年生のときは、イタリア人コーチのキャンプのためにイタリア語を勉強。イタリア語は日常会話レベルと前置きしながらも、「英語とスペイン語とイタリア語、これで世界のサッカー選手のほとんどと会話できる」と息を弾ませる。
中学を卒業したら、アルゼンチンのユースチームに入ってプロをめざす。
「日本からヨーロッパに行こうとすると時間がかかる。アルゼンチンで活躍してエース級になれば、ヨーロッパの大きなクラブからスカウトがかかる。そのぐらいのレベルをめざします」(新太郎くん)
(文/白石圭)
※「AERA English 特別号 英語に強くなる小学校選び2020」から抜粋