子どもに豊かな経験をどう提供できるか?

――夏休みを利用して、普段できない体験をしてほしいと願う保護者は多いと思います。ただ、両親ともに仕事をしながらそれを叶えてあげられる時間や、子どもを安心して預けられる場所が少ないというのが問題です。

 ひと昔前は、「ドラえもん」の世界のように、ご家庭の経済状況に関係なく、近所の子どもたちは公園や広場に集まって、一緒に外で遊んでいたものです。今はやはり、ご家庭の状況によって、夏休みの過ごし方が変わってきています。

 習い事や塾に行く子もいれば、家でひとりで過ごす子もいる。友達と遊ぶ頻度がそれぞれに異なる時代になりました。

 特に、夏休みの旅行やアクティビティについては、経済状況によってどうしても差がでてくるものです。海外のサマースクールに通うという子もいれば、サッカースクールの仲間とずっと一緒に過ごす子もいます。都市部では、中学受験をする子たちが増え、夏の間中、講習に通っていて、塾が居場所という子たちも少なくありません。

 一方で、なかなかご家族で遊びに出かけるのも難しいというご家庭の子もいます。

 調査では、長期休みに「習い事」「友達と遊ぶ」「祖父母や親戚の家に行く」「サマースクール・キャンプ・旅行等」のいずれの体験もない子どもは23%でした。世帯年収別にみていくと、300万円未満では38.5%と高く、一方、300万円以上600万円未満では22.6%、600万円以上1000万円未満では18.8%、年収1000万円以上の世帯では16.5%という結果になり、低所得者層の家庭の子どもは、旅行等の特別な体験が少ないという傾向が見られました。

長期休みに、自宅でひとりで過ごす子が多いという事実だけでなく、低所得者層の家庭の子どもは、旅行等の特別な体験が少ないという傾向が見られました。
長期休みに、自宅でひとりで過ごす子が多いという事実だけでなく、低所得者層の家庭の子どもは、旅行等の特別な体験が少ないという傾向が見られました。

 また低所得者層の家庭の子どもは、友達と遊ぶ機会も平均よりさらに少ないという傾向も見られました。調査では、友達と遊ぶ頻度は全体で「週1回未満」が58.6%で、年収別では300万円未満の層で「なし」が56.9%と著しく多かったのです 。

低学年に比べて高学年のほうが友達と遊ぶ頻度は高いが週1回未満は5割を超えています。また親の年収によって、頻度の違いの差が浮き彫りになりました。
低学年に比べて高学年のほうが友達と遊ぶ頻度は高いが週1回未満は5割を超えています。また親の年収によって、頻度の違いの差が浮き彫りになりました。
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