子どもも親自身も、不完全な存在として丸ごと認める

さわ:ありがとうございます。失敗を繰り返したとしても、それに気づくことが大切なんですよね。母親になってからは「母ってなんだろう」という自問自答も加わりました。自分自身、あんなにつらかったはずなのに、私も長女に同じようなことをしたんですよ。塾に通わせたり、私立の小学校を受験させたり。全部、娘によかれと思ってしたつもりだったけれど、そうではなくて自分が安心したかったからだと、受験に落ちたときあらためて気がつきました。母親の役割って、失敗しないように囲いこむのではなく、失敗しても乗り越えられるよう、どんなあなたでも大好きだよと、子どもに伝えて安心させることなのに。

高濱:まさにそう。親は、子どもの主体性を信じて、見守っていればいい、そばで笑ってくれていればいいんですよ。僕がこう言うと、お母さん方は「そんな簡単なものじゃない」って言いますが。

さわ:究極ではありますが、私も答えはそこにあるのだと思います。親も子どもも、常に条件つきで子どもの価値を判断してしまうことがある。子どもも親自身も、不完全な存在として丸ごと認めると穏やかに笑えるのでは。

高濱正伸先生(写真左)、さわ先生(同右) 撮影:佐藤創紀(写真映像部)
高濱正伸先生(写真左)、さわ先生(同右) 撮影:佐藤創紀(写真映像部)

子どもの様子をちゃんと見て、希望を聞いて、認めてあげる

高濱:現役のお母さんからのメッセージだから説得力あると思いますよ。笑っていられる親になるための、具体的なアドバイスはありますか?

さわ:無条件に「好き」「愛している」と、事あるごとに声がけしてほしいですね。あと、子どもには「あなたは何をしたいの」と聞いてみてください。「~しなさい」とは言っても「あなたはどうしたいの」と聞くことって意外に少ないのでは。こちらから提案・干渉するのではなく、子どもの様子をちゃんと見て、希望を聞いて、認めてあげる、それが過干渉と愛情の違いかなあ。

高濱:ちなみにさわ先生のお母さんは、この本(※)を読んだんですか? ※さわ先生の著書『子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)

さわ:はい。当初はこことここは削ってよ、なんて言われましたけど、今では「この本、私が毒親になっているの」なんて言ってまわりに配っているみたい。

高濱:えーそれはすごい! 鋼のメンタルだなあ。

さわ:ほんと、手ごわいです(笑)。今でもよくケンカはしますけど、シングルマザーの私を快く手伝ってくれているので、感謝してます。

(構成/篠原麻子)

【前編はこちら】「悪夢の始まり」は全国模試1位 児童精神科医のさわ先生も悩んだ、教育熱心な親との「共依存」
AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2025年 夏号 [雑誌]

朝日新聞出版

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2025年 夏号 [雑誌]
著者 開く閉じる
篠原麻子
篠原麻子
1 2