診断は問診によって行います。診察の際には、わきや手のひらを医師に見せる必要はなく、これまでの症状について医師に伝えるだけで、多くの場合は診断可能です。

 以前は、汗で困っていても「体質だから仕方ない」と済まされたこともありましたが、ここ十数年で多汗症は疾患として認識されるようになり、治療法も広がってきました。

Q:多汗症の治療法について教えてください。

 治療の第一選択としては、2020年に保険適用になった「外用抗コリン薬」が考えられます。これは、アセチルコリンという物質がエクリン汗腺の受容体に結合するのを阻害することで発汗量を抑える外用薬です。塗った部分にだけ働くため、副作用が少ないという利点もあります。

 わき専用には、9歳から使える汗ふきシートのようなワイプタイプと、12歳から使えるロールオン式のゲルタイプがあります。また手のひらには、スプレー式の「ローションタイプ」があり、12歳から使えます。いずれも1日1回、気になる部位に塗布します。薬剤を触った手で目に触れないようにするなどの注意点はありますが、比較的、手軽に使用できます。

Q:外用抗コリン薬は、どのくらい治療効果が期待できるのでしょうか。

 個人差はありますが、例えば手汗の薬については約1カ月使い続けることで、汗の量を半分ほどに抑えられるというデータがあります。

 この薬は汗を完全に止めるのではなく、あくまで「生活がしやすくなる」ことを目的としています。

Q:それ以外には、どのような治療方法がありますか?

 以前から使われていた外用薬として、塩化アルミニウム製剤(保険適用外)があります。汗の出口をふさぐ作用がありますが、肌に刺激を感じやすいという人もいるため、注意が必要です。

 また手のひらの多汗症には「水道水イオントフォレーシス」という治療法もあります。これは、水道水を入れた容器に手を10~15分入れ、専用の機器から電流を流すことで、汗腺の働きを抑える治療法です。保険適用されていますが、対応している医療機関は限られています。

次のページへ親の対応法
1 2 3 4