思春期になると増えてくる、汗の悩み。なかでも深刻なのが「におい」です。汗が乾いたときのにおいは、清潔を保つことで軽減できますが、「腋臭(えきしゅう)症」(わきが)はより丁寧な対応が必要になります。悩みが深い場合には不登校につながることも――。今回は、においの発生するメカニズムや受診の目安、子どもでも可能な治療の選択肢まで、皮膚科専門医で小杉町クリニック院長の稲澤美奈子先生に伺いました。※前半<手汗がひどくて手をつなげない、鉄棒が握れない…子どもの「多汗症」にどう向き合う? 【医師に聞く原因と治療法】>から続く
【表】多汗症の子どもたち、一番気になることは?深刻な身体のにおいの悩み
Q:汗のにおいは、何歳くらいから気になり始めますか?
早い場合は、小学校高学年頃からですね。
思春期になると、わきや鼠径部(そけいぶ)、外耳道(耳の中)などにある汗腺の「アポクリン腺」が発達してきます。アポクリン腺から分泌される汗には脂質やたんぱく質といった成分が多く含まれています。その汗そのものは無臭なのですが、皮膚にいる常在菌に分解されるときに独特のにおいが発生します。そのため、アポクリン腺から出る汗が多いと「腋臭症」、いわゆるわきがの原因になります。
日本人の有病率は10人に1人と言われています。
皮膚科に相談されるケースとしては、「ちょっと気になるな」と親御さんが感じて子どもを連れてこられる場合もあれば、子ども自身が学校生活の中で気にするようになり、受診を希望することもあります。
わきがには遺伝的な要素もあるので、わきがの手術経験がある親御さんが「子どももそうかもしれない」と心配して相談に来られる場合もあります。
Q:診断はどのように行うのでしょうか。
基本的には、問診と医師によるにおいの確認で診断します。必要に応じて、運動した後のタンクトップなどをジッパー付きの袋に入れて持参いただくか、受診時に脇の下にガーゼなどを挟んだ上で5分程度の軽い運動をして汗をかいていただき、その場で医師および複数の医療スタッフなどがにおいを確認します。
わきが特有の、スパイスのようなにおいがあるかどうかが診断のポイントです。においの感じ方には個人差があるため、診断は複数人のスタッフで行うとより確実性が増すと言えるでしょう。
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