多汗症の診断基準を満たす中高生と、その母親を対象に、わき汗が多いことで気にしていること・経験したことを尋ねたアンケート調査があります。その結果、中高生で「わき汗があることを恥ずかしく思っている」と回答した割合は8割を超えていました(下のグラフ参照)

 さらに、わき汗があることで「異性との付き合いに消極的になってしまう」(39.7%)、「自分に自信が持てない」(38.8%)があるという深刻な回答をした中高生もいました。

 多汗症は、子どもたちの日常生活や対人関係にも影響を与えるケースがあると言えます。

出典)藤本智子ほか(2023)「中高生の腋窩多汗症に対する認識調査:中高生患者と母親を対象としたインターネットアンケート調査」日本臨床皮膚科医会雑誌 第40巻第2号,pp.170–180.
出典)藤本智子ほか(2023)「中高生の腋窩多汗症に対する認識調査:中高生患者と母親を対象としたインターネットアンケート調査」日本臨床皮膚科医会雑誌 第40巻第2号,pp.170–180.

 また、別の調査で15歳から大人を対象にアンケートを行ったところ「汗のせいで勉強の効率が下がる」と答えている人は多く、通常よりも効率が50%も下がっているという結果でした。

診断方法や治療薬は? 9歳から使える保険適用の塗り薬も

Q:そもそも「多汗症」といわゆる汗っかきは違うのでしょうか?

 汗っかきでも本人が困っていなければ特に問題はありません。しかし、病気や薬の影響で汗が多く出る場合は「続発性多汗症」かもしれません。また、特定の病気ではないけれど局所的に大量の汗が出て日常生活に影響が出ている場合は「原発性局所多汗症」と診断されます。汗腺の数は誰でも生まれつき約300万個と決まっていますが、原発性局所多汗症は発汗をコントロールする交感神経が過剰に働くことで、必要以上に汗が出てしまう症状です。日本皮膚科学会では海外の診断基準をもとに以下六つの診断基準を示しています。

出典)日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」から

 これらのうち、明らかな原因がないまま6カ月以上発汗が続き、2項目以上に当てはまれば原発性局所多汗症と診断されます。日本人の10人に1人は該当すると報告されており、決して珍しい話ではありません。

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