厳しい残暑。熱中症の危険が叫ばれていますが、この時期もう一つの悩みの種となるのが、汗。「汗をかきすぎてプリントがぬれてしまう」「手が湿っていて、友達と手をつなぐのが恥ずかしい……」などと、人知れず「多汗症」で困っている子どもたちがいます。多汗症とはどんな病気なのか、皮膚科専門医で小杉町クリニック院長の稲澤美奈子先生に伺いました。※後半<“自分は臭い”と思い込む「自己臭恐怖症」のケースも 日本人の10人に1人が悩む「わきが」、わが子が悩んでいたらどうする?>に続く
【表】多汗症の子どもたち、一番気になることは?汗の「量」と「におい」は別問題
Q:汗の悩みを持つお子さんもいると聞きます。医療機関には、どのような相談が寄せられていますか。
皮膚科には、子ども自身が気にしていて相談にこられる場合もあれば、親御さんが気づいて連れてこられるケースもあります。よくある汗の相談内容は「量」と「におい」に関するものです。
ここでまず理解しておきたいのが、汗の量が多すぎる「多汗症」と、わきから独特のにおいのする「腋臭(えきしゅう)症」(わきが)は別物ということです。
汗を出す汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があります。エクリン腺は全身に分布し、体温調節のためのサラサラの汗を出します。もう一つのアポクリン腺は、わきの下や、鼠径(そけい)部、外耳道(耳の中)などの体の限られた部分にあります。こちらはたんぱく質や脂質を多く含んだ少し粘り気のある汗が出ます。
エクリン腺の働きが過剰だと多汗症になりやすく、アポクリン腺が発達しているとわきがになりやすくなります。この二つは全く別の症状ですが、両方を併せ持っている子どももいて、それぞれに合った適切な診断と対応が必要です。
わき汗で気になることアンケート。結果は?
Q:多汗症の子どもたちは、学校などでどのような困りごとがありますか。
例えば、手汗がひどくてプリントが湿ってしまう、友達と手をつなぐのが恥ずかしい、鉄棒や上り棒は汗で滑るからできない、手の汗によっていつも服の袖がぬれているなど、深刻なケースもあります。
わき汗の場合は、汗じみが気になって授業中に手を挙げられない、1日に何度も着替えが必要になる、といった困難を抱えることもあります。グレーや白の服は汗じみが目立つので、夏でも黒い服ばかり着ていたり、大量の汗取りパットを使用したりしなければならず、QOL(生活の質)が低下しがちです。
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