――白内障は高齢になるとほとんどの人が発症すると言われていますが、発症する年齢が早まるのでしょうか。

 そうです。白内障の前段階の症状といえるのが、老眼なのですが、まずは老眼になる年齢が早まります。日本では45歳前後で老眼を自覚する人が多いのですが、赤道直下の地域では30代から老眼になりますし、北欧では50代以降に発症する傾向があります。老眼の発症には紫外線のほか、環境温度も関わることがわかってきています。

――なぜ紫外線が老眼や白内障の発症を早めるのでしょうか。

 ものを見るときには、レンズの役割がある「水晶体」が厚みを変えることで、遠くにピントを合わせたり、近くにピントを合わせたりして調節しています。子どものころは水晶体がやわらかいのですが、加齢とともに水晶体の成分であるたんぱく質が変性し、硬くなって厚みを変えにくくなります。このたんぱく質の変性に関わるのが、紫外線と環境温度です。水晶体の変性がさらに進むと、濁ってきて白内障となります。白内障は手術をすれば治る病気というイメージを持つ人が多いと思いますが、世界ではいまだに失明原因のトップです。子どものときから紫外線対策をしておくことは、将来の目の病気を予防し、老化を遅らせるために非常に大事なことなのです。

(取材・文/中寺暁子)

【後編】紫外線から目を守るには「子どもにもサングラスを」と眼科医 「朝、夕の紫外線にも注意が必要」
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中寺暁子
ライター 中寺暁子

健康情報誌編集部などを経て、2000年からフリーに。医療・健康・教育のテーマを中心に取材・執筆活動を行う。

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