――瞼裂斑は、何歳ごろから発症しやすいのでしょうか。

 50歳以上になると2人に1人は発症している身近な症状ですが、子どもの場合は地域差があります。私たちの調査では、石川県における初期瞼裂斑の発症率は小学6年生で3%でしたが、沖縄県の石垣島や西表島は50~70%でした。アフリカのタンザニアで調査したときには、小学1年生でも90%が発症していました。特に紫外線が強い地域ではなくても、野球やサッカーをしている子は、発症しやすい傾向があります。つまり瞼裂斑は、それだけ強い紫外線を浴びてきたサインとも言えます。

――瞼裂斑は治療したほうがいいのでしょうか。

 ドライアイや炎症が強い場合はその治療をしたほうがいいですが、瞼裂斑そのものが視力などに影響を及ぼすことはありません。問題となるのは、瞼裂斑ができるほど紫外線を浴びているにもかかわらず、対策をせずに同じように紫外線を浴び続けると、「翼状片(よくじょうへん)」という病気を発症するリスクが高くなることです。結膜の表面が黒目のほうに侵入していく病気で、進行すると乱視になり、ものが二重に見えるといった症状が出ます。さらに進行すると黒目の瞳孔部分まで覆われ、失明の原因になります。手術をすれば治りますが、再発も少なくありません。発症は30~40代から増え始めますが、サーファーなど日常的に強い紫外線を浴びている人は、20代でも発症します。逆に強い紫外線を浴びていなければ、翼状片にはなりません。

写真・図版(2枚目)| 子どもの「目が赤い」、実は紫外線の影響かも? 目にシミができるリスクを眼科医が解説

白内障のリスクは約9倍に

――子どもの目は特に紫外線の影響を受けやすいのでしょうか。

 すぐに影響が出やすいということはないのですが、子どものうちから強い紫外線を浴びていると、大人になって翼状片を発症するリスクが高まるほか、目の老化が早く進行します。高校まで沖縄に在住していた人と成人してから沖縄に移住した人を比較した調査では、前者のほうが後者よりも翼状片になるリスクが約6倍高いという結果になりました。さらに、白内障になるリスクも前者のほうが8.67倍高くなります。つまり大人になってから浴びた紫外線よりも、子どものときに浴びた紫外線のほうが、将来的には影響が大きいということです。

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