通知表の2は、当たり前じゃない

 通知表を渡す前に、わたしは子どもたちに、「通知表の2ってどういう意味だと思う? 『できました』だね。2は、本当に『できた』人にしかつかないんだよ」と話します。

 すると、子どもたちは、「え!?」と驚きます。2は、当たり前・普通の成績だと思っている子どもが多いからです。さらに次のように具体的に確認していきます。

「テストで、うっかりミスは多くなかった? 計算ミスや単位の書き忘れ、漢字の書き間違い。送り仮名の書き忘れとか」
「自分の考えを書いたり、発表したりできた? 話し合いは進んでできた?」
「調べたことをしっかりまとめられた?」
「ノートは、ていねいに書いた?」
「今学期、本当にできましたか?」 

 子どもたちは、(あ~!できていなかった~)という表情で話を聞いています。そして、最後に次のように話してから、通知表を渡します。

「本当にできていないと、2にはならないよ。少しでもできていないところがあれば、1の『がんばりましょう』だよ。ましてや、3(よくできました)なんて、めったにつかないからね」

 子どもたちは、「やばい! 1ばかりかも…」という表情になります。

 そして、通知表を渡すと、「2が5個もあってよかった~♪」というように、2がついていることに喜ぶ子どもが多く見られるようになります。「え、3が1つある‼」と大喜びの表情の子どももいます。

 もし、事前に前述したような話をしなければ、このような表情はなかったと思います。「え~、2ばっかり~」「3が1つだけ~」という残念そうな表情の子どもが多くなっていたかと思います。

 そして、通知表を渡すときにもう1つ心がけていることがあります。それは、子ども一人ひとりのがんばりは、数字だけでは表せないということです。通知表の所見欄がなくなってきている学校が増えているかと思います。

 以前は、通知表の評定に表れない子ども一人ひとりの良さ(優しさ・思いやり・協力・積極性・協調性・勤勉さ・公共性・善悪の判断・想像力・創造力・ユーモア・リーダー性など)を文章記入して、伝えられていました。所見の記入がなくなり、教師の仕事量が軽減されました。しかし、文章で伝えられないからこそ、通知表の数字で表せない子ども一人ひとりの良さを、通知表を渡すときに伝えるようにしています。

(文/松下隼司)

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松下隼司
松下隼司

1978年生まれ。奈良教育大学卒業。大阪の公立小学校に勤める現役教師。2児の父親。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。令和6年版教科書編集委員を務める。著書に絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)、『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(フォーラムA企画)などがある。教師向けの情報サイト「みんなの教育技術」で連載を持つほか、Voicy「しくじり先生の『今日の失敗』」でパーソナリティーを務める。

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