小学生の息子を一人残して、家族3人で実家へ行きお正月を過ごしたこともある。当時の私にはお正月に実家へ帰らないという選択肢はなかった。たとえ息子を一人家に残したとしてもお正月は親戚一同で過ごすもの、それが当然だとしか思っていなかった。
どんな思いで息子は一人のお正月を過ごしていたのか。思い返すと今でも心が痛んで涙がでてしまう。
あるとき、私は「お正月に絶対に実家に行かなくてはいけないのか?」とはじめて疑問を持った。息子に寂しい思いをさせて、私はなぜ実家に行くのか? 親のため? 夫のため? お正月に両親と過ごすことが常識なのであれば、常識って何なのか?
親と息子、もちろんどちらも大切だ。でも私が命にかえても絶対に守りたいもの。それは親よりも息子だった。
私はそれに気づいてから、ある年のお正月、行きたくないという息子と一緒に私も家に残ることにした。夫の機嫌が悪くなるのもわかっていたし、私が家に残ると言い出すのは私にとってはとても勇気のいることだった。
案の定、夫は怒りながら娘と二人だけで帰省した。私と息子、二人だけで家で過ごしたお正月の夜。寂しい夜だった。息子はずっとこんな気持ちだったのか。
実家へ行く行かないで荒れていた息子も、夫と娘が出かけてしまうと落ち着きを取り戻し「やっぱり行こう」と言い出したのは息子のほう。私と息子は後を追いかけるように翌日に日帰りで実家へ行ったのだった。
このころから私の気持ちは子ども側についていたのかもしれない。
思い返すと、私が子どもの側につくと私も孤独になってしまうと無意識にわかっていたような気がする。だから私の中で複雑な気持ちがありながらも、私はほかの大人たちの言う通りにしていた。本当に息子に申し訳ないことをしてしまった。
息子の命は私が守る
私はこれまで夫や両親の言うことはほぼ何でも正しと思っていて、実際その通りにやってそれなりにうまくやれてきた。
でも息子のことに関しては、これ以上、夫や両親の言う通りに続けてはダメだ。息子が死んでしまう。私の中で生まれてはじめて「これだけは誰が何と言おうと曲げられない」というしっかりとした自分の意思が芽生えはじめていた。
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