たとえばタバコの問題がそうです。昭和の頃、大人は当たり前にタバコを吸っている人が多くいました。でも「タバコを吸うと、肺がんの罹患率が上がります。だからやめましょう」と大々的にPRすることで、タバコを吸っている人にやめさせるだけでなく、タバコを吸い始める人を減らし、「タバコはよくないよ」と言う人を増やしたのです。
いじめも同じです。全ての子ども、つまり傍観者になり得る子どもたちに向けて伝えていくことで、いじめが起きない環境にしたいのです。
欧米のいじめ予防プログラムもほとんどが傍観者教育です。
「や・は・た」はいじめを止めるキーワード
――和久田さんの提唱する「傍観者教育」とは?
一つ目が、先ほど言ったシンキングエラーを正すこと、起こしにくくすることです。正しい知識を伝えることで自分の中にあるまちがった思いこみに気づき、その考えを自分の外に取り出して修正していきます。
どんな理由があっても人を傷つけてはいけないことを伝え、理解できる年齢の子であれば、いじめは「いじめ防止対策推進法」という法律で禁じられている人権侵害であることも教えていきます。
実をいえば、シンキングエラーを正すだけでもいじめは起こりにくくなるのです。
二つ目は、行動を変える方法を教えていくことです。そのためのキーワードが「や・は・た」です。
これは自分がいじめられたときにも、いじめを目撃したときにも使えます。実際にいじめのコーピング(対応行動)研究でその効果があきらかになっているキーワードです。
三つ目は、子どもたち自身に「どうすれば、いじめが起こりにくい学校に変わるのか」を考えさせることです。これまでそれは、教師や保護者など大人の責任とされていました。
しかし、どんな集団であったとしてもその中の一人ひとりが「みんなにとって心地いい場所にしよう」と考える必要があるのです。
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