そしてもう一つ、傍観者こそがいじめ予防のカギを握っているからです。
いじめは「シンキングエラー」から起きる
――傍観者が、いじめ予防のカギを握っている? それはどうしてですか?
ある調査では、いじめを見た子——つまり傍観者ですね——がその場で「やめた方がいいよ」などと声をあげると、6割近くのいじめが数秒以内に収まるということがわかっています。
なのに9割の子は声をあげません。それだけでなく「これは楽しい遊びなんだ」とか「ほかの子も何も言わないんだから、これでいいのだ」といった「シンキングエラー」™を起こしてしまうのです。
――シンキングエラーとは何ですか?
まちがった考えや思いこみのことです。いじめ対策を進める上で、私たちがもっとも重視しているのがシンキングエラーです。
いじめの加害者に話を聞くと、「自分はいじめていない」ということが多くあります。「遊んでいるだけだ」と。これがシンキングエラーです。
あるいは、「あの子は変わっているから」「悪いことをしたからいじめてもいいんだ」と思いこんでいることもあります。ご承知のとおり、どんな理由があっても、誰かをいじめて良いということはありません。また、いじめられて良い子どももいません。よって、このようにいじめを許容する考えは全てシンキングエラーです。
このシンキングエラーを正すことはとても重要で、「あなたは遊びでも、相手にとってはいじめになる」「シンキングエラーを正すことができれば、きみはいい子になるんだ」というメッセージを伝えることがいじめの解決につながることも多いのです。
――多数の傍観者に向けてシンキングエラーを正す教育をしていくことが、いじめの予防につながるということですか。
その通りです。それに「加害者・被害者を見つけよう」と思う時点で、すでにいじめが起きていることを意味しますよね。でも本来は、その手前で食い止めた方がいいはずです。
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