父親の育児休業取得率が過去最高の3割を超える中、社会から孤立しがちな父親を支援しようという動きが広がっています。こども家庭庁の研究班は今年1月、国内初となる自治体向けの手引き『父親支援マニュアル』を作成。マニュアルが作られた背景について、研究班のメンバーでもある大阪教育大学教授の小崎恭弘さんに伺いました。※後編<「なんで男が育休?」から「育休どうします?」と会社に聞かれる時代に 父親育児はどう変わった?【専門家に聞く】>へ続く

MENU 父親支援の必要性からマニュアルの作成に 妊娠・出産・子育ての支援対象を男性にも広げる 江戸時代の子育てや教育の中心は男性だった

父親支援の必要性からマニュアルの作成に

――『父親支援マニュアル』とはどんなものですか。

 父親支援に向けて取り組もうとする自治体の母子保健担当者に向けて作られたマニュアルです。父親支援とは一体どういうものか、どんな問題があるのか。また実際に支援していくためにはどんな事業・研修を展開していけばいいのか。担当者が具体的に動けるよう実践的な方法が書かれています。父子手帳やパパママ教室など父親支援の事例も載っています。自治体関係者だけでなく、いろんな方が参考にしていただける内容で、『父親支援マニュアル』は無料ダウンロードできます。

――『父親支援マニュアル』が作られた背景について教えてください。

 この何年かで父親の位置付けは大きく転換しました。まず2019年に施行された成育基本法で父親が支援対象であることが初めて法律の付帯決議で明文化されました。そして5年前、父親支援を調査研究するための国の研究班が立ち上がりました。というのも、これまで日本には父親を支えていくためのエビデンスやまとまった研究がなかったからです。僕もメンバーの一人ですが、国立成育医療研究センターの竹原健治先生を中心に研究を進めてきました。

 父親が育児に関わることで子どもに良い影響をもたらすことは明らかになっています。一方で、大規模なデータから「男性の産後うつ」が課題であることも分かってきました。その中で父親支援の必要性が浮かび上がり、このマニュアルを作成することになりました。

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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