東京都品川区は今年2月、23区で初めて区立中学校の制服を所得制限なく無償化することを発表しました。ほかにも小学生の朝の居場所確保や朝食提供、中学校修学旅行費の無償化など、子育て世帯への支援を充実させています。制服無償化のねらいや子育て支援に対する理念について、森澤恭子区長に聞きました。
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品川区の区立中学校は、全部で15校。制服は中学校によって異なり、標準服1式3万3000~5万2000円かかる。無償化の対象となるのは、区立中学新1年生と区内在住の特別支援学校中学部新1年生で、2026年度以降の新入生から実施される。対象者は1900人程度の見込みで、予算額は約1億円にのぼる。自身も小学生と中学生を育てる森澤区長は無償化に踏み切った理由を次のように話す。
「義務教育は無償とする、という憲法の趣旨も踏まえ、品川区はこれまでも給食費や学用品の無償化を実現してきました。また、区民の皆様から同じように納めていただいた税金なのに“分断があってはならない”という考えから、所得制限は設けていません。入学時の制服購入については、民間の調査で保護者の負担が非常に大きいという結果が出ていることもあり、無償化に取り組むことになりました」
制服無償化については、以前から検討されてきたが、近年の物価高などの背景を踏まえて実現に踏み切ったという。品川区はさらに、予算額約1億3000万円をかけて、区立中学校の修学旅行費も所得制限なく無償化する。こうした支援策により、義務教育でかかる主な費用はすべて区が負担することになるが、なぜ子育て支援にここまで大きな予算をかけられるのか。
「品川区は区民のウェルビーイング実現のため、区政の全669事業におけるさまざまな施策の検証や見直し、アップデートを行ってきました。区有施設のデジタルサイネージを廃止したり紙媒体の各種情報紙を電子化したりするなど事業の削減に取り組んだ結果、約20億円を捻出しています。品川区では、23年度から区立学校の給食費の無償化を実施していますが、24年度からは東京都が費用の半分を負担することになり、ほかの区でも給食費無償化の動きが広まっています。先駆的な取り組みによって一石を投じることで、子育て支援が日本全体で充実していくことを目指しています」(森澤区長)
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