親はきっと、ぼくが大学に進んで就職する人生を歩むと思っていたはずなんです。それなのにたった1年前に始めたギターでプロになるなんて……よくやらせてくれたな、と思います。
「なんで反対しなかったの?」って聞いたら、「反対したってやめないでしょ」って。

 懐が深いです。ぼくは親としてまだまだだなぁ、と思いました。

「ズレたがんばり」こそが人間の魅力

――息子さんは小5と小3ですが、現時点で親として反省していることがあるのでしょうか?

 長男の子育てをやり直したいな、と思うことはあります。

 彼は運動が苦手な子で、ダンスはできるのですが、ボールがつかめないし、鬼ごっこですぐつかまるし、飛び箱や縄跳びがうまくできないし……。本人は「できるようになりたい」というので、いろいろやってみたんですが、結局苦手なものは苦手なままなんだな、と分かりました。

 今だったら「きみにはもっと得意なことがあるんだから、大丈夫。これはできなくてもいいんだよ」って言ってあげたいな、と思います。

――みんなと同じことができなくても大丈夫だ、ということですね。

 ぼくは、人の「ズレたがんばり」が大好きなんです。それこそが個性だと思っているから。

 たとえば鉄道が好きな子って、誰に頼まれたわけでもないのに駅名を覚えたり、路線図を暗記したり、全身全霊かけてがんばるじゃないですか。すごい熱量で。でも、それが生きていく上でそこまで役に立つわけではない。一般的に考えると、ズレたがんばりだと思います。でも、そこに、その子の個性が絶対にあると思うんです。

 若いバンドのプロデュースをするときにも、「ズレた熱」を見つけたいと思って「きみには何か、熱量をもって1時間語れるものがある?」と聞くことがあります。それは音楽に限らなくてもいい。熱く語りたい「何か」を持っている子ほどおもしろいものを作るし、みんなと同じものしかもっていない子は「みんな」の中に埋もれてしまうんです。

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