どんなことでも、反面教師にすれば教材になりますし、飲み込まれると痛い目に合う。それは大人がちゃんと伝えていきたいことだと思います。

――どのようにしてわが子に伝えればいいのでしょう。 

 子どもとたくさん話すことが大事だと思います。教えるのではなく、あくまで対等に。

「言葉っていうものは、こういうふうに使うと、こんなふうに伝わるんだよ」ということを、実践の中で学ばせてあげるのが一番なんじゃないでしょうか。

言葉との出合いは、プラモデルの説明書

――いしわたりさんご自身は、親御さんからどんな教育を受けてきたのですか?​ 

 全然覚えていないんですよ。自分の息子が生まれたときに、気になって親に聞いてみました。そしたら母は「育てた覚えはない。あんたは勝手に育った」って(笑)。

 ぼく自身、親に怒られた記憶もほとんどないし、成績もよかったんです。

 ただ、幼稚園を年中のときに辞めているんです、自主的に。

 年長の1年間は暇で、歩いて行ける範囲にあったおもちゃ屋さんに毎日一人で行って、プラモデルの説明をはしからはしまで全部読むのを日課にしていました。毎日毎日、暗記するくらい読みました。

 でもこれって、冷静に考えると十分問題行動ですよね。それすら問題視せず、好きにやらせていたんだからすごいですよ。

5歳のときのいしわたりさん(提供)

――本は読まないのに、説明書は読んだんですね。

 ぼくは物のしくみに興味があったんです。プラモデルという複雑なものを、絵と最短の文章だけで間違いなく伝えていることがおもしろかったんだと思います。

 ぼくは今、感情という複雑なものを、最短の言葉にして伝えるという作詞の仕事をしています。その最初の勉強はプラモデルの説明書だったんじゃないかな。

 あれは人生で最初の「文章とのふれあい」だったと思います。

――説明書を暗記するまで放っておいてくれた親御さんの姿勢が、現在のいしわたりさんをつくってくれたのですね。 

 ぼくは15歳で全寮制の高校に入って親元を離れ、高校2年生で突然ギターを買って、高3でバンドを組んでソニーにデモテープを送りました。そしたら受かってしまって。そのときですら、親には何も言われなかった。

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