大学入試で「漢字の書き取り」はほとんどない
――この先ますます子ども時代から文字を手で書く機会は少なくなりそうです。この先、漢字が書けない日本人が増えるという危惧はありますか。
あると思います。読めるけど書けないという漢字はどんどん増えると考えられます。これから手書きというものがどういう形で社会の中に残っていくのか。小学校で習う漢字は1026字です。今の子どもたちはすべて読んで書けるということを求められています。しかしそのうち6割は書けて4割は読めればいい、となるかもしれません。
今はちょうど漢字教育の過渡期です。今後、漢字を実際に書くのは覚えるためだけで、プライベートなシーン以外はほぼ書く機会がなくなるのではないでしょうか。それこそ筆順(書き順)指導というのは手書きの減少とともに必要性が減ってくるのだろうと思います。
きちんと調査したわけではありませんが、最近の大学入試を見ると漢字の書き取りを課している大学はほとんどありません。読みを問う問題になっています。そういう動きもあるので、今後の高校入試なども変わっていくかもしれません。いずれにせよこんなに書字離れが進んでいる状況は過去に例がありません。これから書字離れが進むことで、今の子どもたちがどういう形で能力が欠如するのかしないのか、これからわかることです。興味深いのはデジタル先進国だったスウェーデンの教育が、タブレットから紙に回帰していることです。
小学1年生で「丁寧に書く」習慣をつけよう
――漢字の練習だけでなく日記の宿題なども減るなか、小学生のうちに気を付けておきたいことはありますか。
各家庭で日記を手で書く習慣があれば素晴らしいですが、なかなか現実には動機づけが難しいでしょう。今の子どもたちは昔の子どもたちより「書くこと=めんどくさい」と思う傾向があります。SNSのやりとりにはスピード感がありますが、一画一画ていねいに手で書いて相手に何か伝えるとなると、別格の時間と労力がかかる。そういう作業を多くの子どもたちが放棄しています。
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