矢萩:僕はそういうシビアさは、少なくとも小学生の段階ではわからなくてもいいのではないかと考えています。だっていつもあと1問、あと1点のところまでいっている、っていうことはほぼ達成しているってことじゃないですか。全然わかっていないのとは雲泥の差ですし、まずはそこを評価してあげるべきだと思います。大事なのは自己肯定感です。要はだいたい理解して問題にも取り組めているっていう状況が今あるわけです。これはすごいことですよ。

矢萩邦彦さん

安浪:今5年ということは、塾では6年のカリキュラムが始まっている頃でしょうか。6年生になったからこそ、より自覚を持ってテストに臨んでほしい、と思わるのかもしれませんが、今は1点が足りないと叱られるよりも、できたところを認めてあげて勉強に対する意欲を高めてほしい時期です。

1点へのこだわりより、ポジティブさが評価される

矢萩:あと将来、1点で評価が分かれるようなシビアな業界で働きたいとか、主体的であれば1点へのこだわりに向き合うことにも意味があるとは思うんですけど、僕が知ってる限り、だいたいどんな業界・職種でも基本ができてればポジティブな性格のほうが評価されます。だから1点にこだわりすぎるとか細かすぎるということがいいことなのかどうか微妙です。人生の最終目的が受験だったらいいかもしれないけれど、そうじゃないよね、っていう視点もちょっと持ってほしいなと思います。

安浪:「詰めの甘さを直して達成を習慣化させる」って完全に親の願望というか、アスリートの世界ですよね。もちろん、アスリート受験目指して親御さんも一心不乱にサポートをされているならば話は別です。子どもも追い込まれますから、自分の身を守るために必死にならざるを得ない。でも、文面からはそこまでは感じられず、もし、単に子どもにアスリートマインドを持て、と思われているだけならば、それは都合が良過ぎるとも思いますね。でも、中学受験の本番で得点開示されて、1点や2点の差で落ちたことがわかれば、次の受験で本人自身が言われなくても意識すると思いますよ。

矢萩:結局1点が悔しいかどうかって完全に本人の体験によると思うんです。自分が本当にあと1点で何かが変わる大きな体験をして、はじめてその1点にこだわることができるんです。逆に言うとそういう体験がなく1点にこだわるのってただ細かいだけなので。せっかく自分はここまで行っていたのに、あと1点あればもっと評価されたのに、みたいなことを本当に自分ごととして思ったときに初めて1点を大切にしよう、という思いがポジティブに機能し始める。「1点届いていないのはもったいないでしょ」って外からやいのやいの言って何とかさせる問題ではないと思いますね。

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