駆除薬1本3000円、負担が大きい家庭も
――耐性アタマジラミにも効く薬はあるのでしょうか?
2021年に発売されたジメチコン製剤のローションは、耐性アタマジラミにも効果があります。これはシリコーンの一種で、アタマジラミの虫体や卵の呼吸口(気門)をふさいで窒息状態にします。物理的な作用なので、耐性化されにくいと言われています。もしピレスロイド系のシャンプーで効果がなかったとしても、ジメチコン製剤のローションをしっかり使えば、ほとんどの場合は駆除できます。
――では、ジメチコン製剤のローションがあれば問題は解決するのでしょうか?
そうとも言い切れません。アタマジラミの駆除には、時間も手間もかかります。一度経験した人ならわかると思いますが、子どもの頭に薬をつけたり、くしですいたりする作業は、親御さんの負担が大きいものです。また、アタマジラミの駆除薬は1本3000円前後で市販されており、家族全員で使うとなると大きな出費です。特に子どもの多い家庭では、時間的、経済的な問題から手が回らず、十分に駆除できないケースもあるのです。

――新しい薬の開発は進んでいるのでしょうか?
現在、「イベルメクチン」という薬のローションが臨床試験中です。すでにアメリカなどではアタマジラミの駆除に広く使用されている薬で、頭に塗って10分おいて洗い流すだけで駆除が完了します。
日本では、疥癬(かいせん)という寄生虫の治療に内服薬として使われている実績があります。アタマジラミの治療のためのローションは初めてなので、現在、有効性や安全性を確かめているところです。
イベルメクチンのローションは、市販薬が効かない人たちのために、医療機関で処方される薬として承認を目指しています。処方薬になれば、自治体によっては子どもの医療費助成が受けられるので、経済的な負担がかなり軽減されます。また、1回の使用で駆除が完了するため、手間や時間の問題も解決すると期待しています。
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