おすすめポイント

 役立つことを期待されていなかった元のらネコのトムが、困った飼い主のために働きに出るというストーリーがまずおもしろいです。

 トムは、ケガをしたランスさんにこう言います。「ぼくにも運転できるタクシーを作ってください。小さなネコのタクシーを。そうすれば、ぼく、仕事をしますから」と。できあがったタクシーは、見た目はランスさんのタクシーそっくりで、ハンドルもついていますが、エンジンがありません。俊足自慢のトムが、足を使って走っているのです。

『ネコのタクシー』(南部和也 作/さとうあや 絵/福音館書店 刊)

 トムがはじめた仕事は、ネコ専門のタクシー。自転車にひかれてしまった子ネコを運んだり、自分の結婚式に遅刻しそうなネコを乗せたり。料金は1ポンドで、もともとお金に興味のなかったネコたちも、必要とあらば、植え込みや人間が落とした場所からちゃんと1ポンド硬貨を拾ってきて払ってくれます!

 ネコ専門の獣医師が書いた、ほのぼのとしたお話。ちょっとしたゆかいな事件から泥棒を追いかける大事件まで、ユーモラスなネコの魅力がいっぱいです。挿絵がたくさん入って、絵本から童話への架け橋にちょうどいい一冊です。

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