そうして6年生の11月、息子にとって最後となる「小学生テスト」が行われました。その結果に、私は、驚きました。息子の偏差値が70を超えていたからです。「息子のこれまでの頑張りが目に見える形になった、良かった」とホッとしましたが、それでもこの時点で麻布受験は考えていなかったです。

 受験まであと2カ月になった12月、本命校である神奈川県の発達障害に理解のある私立中学の願書を提出するという段階になって、「そういえば、麻布はどうする?」と軽く聞いてみたら息子が「麻布に行けるなら行ってみたい」と言い出したんです。息子のこの言葉が本能的に私の脳内で引っかかったのを覚えています。

「ひょっとしたら、これは息子の人生の分岐点かもしれない」と脳内でアラームが鳴った気がしました。「やるんだったら、“ダメ元”ではなく合格するために徹底的にやるんだよ。それでもいいの?」と確認しました。息子は「やる」と即答。息子が本気で挑戦するなら、結果がどうであれ、限界まで「やり切った」体験が得難い財産になる。そう確信し、あわただしく麻布受験の準備を始めました。

本番までの2カ月間は「要約」に徹して対策を
 

――それまでも勉強を頑張っていたとはいえ、2カ月間の対策で麻布中学の合格を勝ち取るのはすごいことです。どんな対策を?

 急いでネットで調べた程度で「にわか」だったのですが、麻布中学の受験は思考力を重視するものが多く、記述問題の配点が高いことが特徴だと言われています。息子は11月の「小学生テスト」で偏差値70を超えていましたが、12月に受けた2回の日能研の模試は、4日に受けた偏差値が56、24日は偏差値55で、どちらも麻布中学を志望校にした判定結果は「再考の必要あり」でした。

 息子は発達障害の特性から「記述問題」が大の苦手でした。「小学生テスト」はマークシート式で、日能研は記述もある試験。偏差値にはわかりやすくその差が出ていました。

 受験まで2カ月を切って時間がないなか、発達障害の影響から苦手である「記述力」と「勉強への集中の持続」をどう対策するか。合否よりも「息子のやり切った感」をどうすれば体感させられるか。親として覚悟を決める必要がありました。

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