――“受験生の親”と“塾講師”を両立させるうえで、難しさを感じたことは?
息子の授業を受け持っていましたし、家でもある程度は勉強を見ていましたから、「塾では習っていない」「塾の先生はそんなふうには教えていない」という子どもならではの言い訳が一切通用しない。小さな塾ということもあり、周囲の生徒たちもクラスに僕の息子がいることはわかっている状況でした。「塾での様子も家での様子もすべて見えてしまっている」ところに難しさがありました。息子にしてみれば、逃げ場がない状況だったとも思います。
受験直前に盲腸でまさかの入院!「生きていればそれでいい」
――直前期はどのように過ごしていましたか。
小学5年時は第1志望校の合格ラインからは遠い状況でしたが、6年の秋には合格率80%まで成績が上がりました。ただ、その後盲腸になり、急遽入院する事になってしまって。手術を受けるため、3週間ほど入院することになりました。妻はその間ずっと付き添いが必要なため、僕は妻が受け持っていたクラスの授業も代理で行わなければいけない状況になり、かなり焦っていたと思います。焦ってはいましたが、逆に言えば「生きていればそれでいい」「無理をさせるのではなく、できる範囲でやるしかない」という思いが強くなっていました。
もともと、やみくもに上の偏差値帯を目指すのではなく、多少なりとも成績に余裕のある状態で入学したほうが入学後の本人の自立に繋がるのではないか、と考えていましたが、そうした思いもより強くなった気がします。
いざ自分の子どもとなると、動揺してしまった
――中学入試がスタートしてからはどんな毎日を送っていましたか。
「合格できるならこの日かな」と思っていた試験日に合格を手にすることができず、かなり動揺はしました。ですが、動揺している素振りはなるべく見せず、「明日もあるし、早く寝よう」と、気持ちを切り替えられるような前向きな言葉を掛けるように心がけていました。
塾講師として、初日に合格を手にできなくともその後合格するケースは何度も目にしてきたはずなのに、いざ子どもの受験となると「自分の子どもには当てはまらないのではないか」と思ってしまう。過去問で合格平均点に届かなくとも、実際の試験では合格を手にする生徒の例も何度も見てきたはずなのに、我が子となるとそうは思えなくなってしまうんですね。
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