子どもたちは午後になると疲れ、集中力がなくなる、忘れ物が多くなった。教員は翌日の授業準備をする時間がとれない――。いま、小中学校の教育現場からこうした声が聞こえてきます。原因の一つとして指摘されているのが、「カリキュラム・オーバーロード(詰め込みすぎカリキュラム)」です。『学校の時数をどうするか――現場からのカリキュラム・オーバーロード論』(明石書店)の著者の一人で、現職小学校教員の水本王典(きみのり)さんに話を聞きました。※別記事<【「小学校の平日1日の授業時数は過去最多」 休み時間、放課後が奪われる「詰め込みすぎカリキュラム」の問題点とは】に続く>
【表】1998年と2017年の「時間割」どう変わった?(ほか2枚)6時間目には疲れが出て、集中力が明らかに落ちている
「カリキュラム・オーバーロード」とは、2020年ごろから教育界で言われている言葉です。東京学芸大学現職教員支援センター機構教授の大森直樹さんは「国の教育課程基準に基づき学校が定めた教育課程の時数と内容が過多になっていて、子どもに過大な負担がかかっている状態」と指摘します。
簡単にいえば、授業の時数や勉強する内容が多く、子どもに負担がかかり過ぎているということです。この「カリキュラム・オーバーロード」は、教育現場にどのような影響を与えているのでしょうか。
「私は3年生の担任ですが週に3日は6時間授業で、4年生以上になるとほぼ毎日6時間授業です。子どもたちは午後の授業、特に6時間目になると本当に疲れが出て、集中力が落ちているのが明らかにわかります。職員室でも子どもが疲れてイライラすることが多いと話題になっていますし、保護者からも6時間の授業がある日は子どもが疲れて帰ってくるという話をよく聞きます」
そう話すのは北海道の市立小学校教諭の水本王典さんです。教員歴34年のベテランですが、そうした原因は授業時数と授業内容の多さにあると言います。
下のグラフは教育課程基準の改訂によって過去、平日1日の授業時数がどのように変化してきたかを表したものです。小2は5.2時間、小4・小6は6時間となっています。小2と小4、小6では過去最も多い時数になっていることがわかります。ついこの間まで幼稚園や保育園に通っていた子どもが、小学入学後の5月くらいからいきなり5時間の授業を受けることになると水本さんは話します。
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