「展示物を見て説明を聞くだけでなく、生き物や岩石などの本物に触れて実験や観察をする経験を積み上げてほしい。だから、ワークショップに力を入れています」


 もっと本格的な研究にじっくり取り組みたい子どもたちのために用意されているのが、ジュニア研究者を育てる「研究部」。大学院で研究経験のあるスタッフの指導を受けながら実験や研究に取り組むもので、子どもたちは月に2 回、科学館に通って活動に参加する。
「研究部は、トレーニングコース、ステップアップコース、チャレンジコースに分かれていて、最初のトレーニングコースでじっくり研究の基本を学びます。ステップアップコースでは指導者がテーマを与え、それに沿って研究します。チャレンジコースでは、自分で何をやるかテーマを考えて研究を進めます。レベルの高い本気の自由研究という感じですね。研究のテーマによっては、専門家を招いて指導してもらったり、大学に行って電子顕微鏡を使わせてもらったりしたこともあります。」

 2022年に開設された研究部で、これまでにチャレンジコースまで進んだ人はまだ2人しかいないという。それだけ、内容が詰まっているともいえ、理科が大好きで将来は研究者になりたいと思っている人には、挑戦のしがいがある活動にちがいない。

展示されている海の生き物の骨格

館長の思いは「科学が応援される社会をつくりたい!」

 このユニークな科学館の元となったのは、2010年、当時東京大学柏キャンパスの大学院生だった羽村さんが、科学を広める活動を通して地域の人たちと交流しようと、同じキャンパスに通う仲間たちとともに立ち上げた「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ」だ。その活動を続けるなかで、誰もが集まれる場所をつくろうと、空き家のアパートを見つけ、仲間といっしょに文字どおり手作りで内装を整え、18年に科学館としてオープンした。


「エクセドラ(Exedra)」とは、古代ギリシャ・ローマ時代(紀元前8世紀~ 紀元後5 世紀)の家にあった、半円形の壁に沿って石造りのベンチが設けられた部屋のこと。そこで人々は科学や哲学(※2)についての議論を交わしたといわれている。そんな当時の井戸端のような、人が集まる場をイメージして名づけられた。

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