ペットとして愛されているネコ(イエネコ)は、いつごろから日本にいたのだろう?日本のネコの来歴について、DNAを詳しく調べることからわかった研究成果を紹介します。ネコを飼っている人、いつか飼いたいと思っている人は必読! 小中学生向けのニュース月刊誌『ジュニアエラ2024年4月号』(朝日新聞出版)からお届けします。

MENU 日本に来たのは奈良・平安時代?それとも弥生時代? ゲノム解析が示した答えは「平安時代」 貴族にかわいがられ江戸時代には家族の一員に

日本に来たのは奈良・平安時代?それとも弥生時代?

 私たちの身の回りにいるネコは、イエネコという種で、元々はアフリカにいた野生の「リビアヤマネコ」が家畜化されたものだ。その時期は1万年ぐらい前と考えられている。その後、イエネコは世界の各地に広まり、それぞれの土地で特有の体の特徴を持つようになった。現在は大きく中東・アフリカの集団、ヨーロッパ・アメリカの集団、アジアの集団の三つに分けられるという。

イエネコの祖先といわれるリビアヤマネコ。現在でも、アフリカの限られた地域に野生のものが生息している

 イエネコが日本にいつごろ入ってきたかについては、昔の書物や遺跡から見つかる骨などから、これまでは、8~9世紀、奈良時代から平安時代にかけてだろうといわれてきた。書物でいうと奈良時代の初めに成立した『古事記』や『日本書紀』にはネコが出てこないが、平安時代に書かれた『源氏物語』や『枕草子』にはネコが登場することからも、そう考えられる。

 しかし、2007年に、兵庫県姫路市で見野古墳群6号墳(6~7世紀/古墳時代後期)から出土した須恵器という土器の一種に、ネコの足跡らしいものが見つかり、奈良時代より前にイエネコが入ってきた可能性が出てきた。14年には、長崎県壱岐市のカラカミ遺跡から見つかった動物の骨が紀元前2世紀(弥生時代)のイエネコのものと発表され、さらに前に日本に来ていた可能性が示された。
 ただし、カラカミ遺跡の骨や、須恵器の足跡について、本当にイエネコのものか疑問視する研究者もいて、日本のイエネコの来歴は依然、謎に包まれている。

兵庫県姫路市の見野古墳群6号墳から発見された、ネコの足跡らしいものが残った須恵器 写真提供 姫路市教育委員会
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上浪春海
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