「明治時代、学校が始まった当初の掃除は先生の仕事でした。子どもたちが増えて先生の手が回らなくなり、清掃員を雇うお金もなかったので子どもたちに掃除をさせた、とする説もあります。戦後からは子どもたちによる掃除が自明のものとなりました」(表さん)

 日本では教育活動の一つとして行われてきた学校清掃ですが、教育的位置付けが初めて明示されたのは意外にも遅く、2008(平成20)年のこと。学校清掃は、小学校学習指導要領の特別活動の中で「働くことの意義の理解」とされ、キャリア教育の一環として位置付けられました。中学校では教育的位置づけがいまだにありません。

無言清掃への批判もあるけれど学校はピカピカに

「子どもの学校清掃については、管理教育などの視点から専門家らによる批判もあります。特に無言清掃については『コミュニケーションの機会を奪う』と指摘されることもあります。一方、学校現場では無言清掃を教育目標とする学校もあるほど重視されています。実際に無言清掃により“荒れ”が落ち着いたという中学校もあります。調査した福岡の中学校では、お手本となるよう先生たちも一生懸命掃除をやっていて、学校周辺もきれいにしたことで地域からも信頼されるようになったそうです。どの学校もピカピカで、10〜15分の間黙って掃除すると効率的であることは事実だと感じます。厳しく無言を強いる学校ばかりでもありません。小中学生を持つ保護者に調査した結果、『自分の子どもたちにもしっかりと掃除を指導してほしい』と考える人はたくさんいました」と表さんは話します。

 全国にある無言清掃。なぜ無言で掃除するのか、なぜ黙想をするのか。子どもたちが意味を理解できないまま強いるのではなく、子どもたち自身が意味を理解したうえで実行できる環境が求められています。

(取材、文/大楽眞衣子)

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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