しゃべったら先生に怒られる…厳しすぎる指導も
こうした背景には厳しすぎる指導も指摘されています。「しゃべったら先生に怒られる」「しゃべった低学年の子が高学年の教室で掃除をさせられた」「掃除中は赤白帽をかぶらなくてはならなくて、しゃべった人は赤白の色を変えさせられた」という実例も。こうした環境にいる子どもたちは、緊張感を持って掃除をするようです。
掃除の前後に黙想をする学校もあります。掃除の前後に集まって30秒間黙想する学校や、黙想して自分と向き合えた生徒から掃除を始める学校も。長野県では小学生は赤白帽、中学生は頭に手ぬぐいを巻いて取り組む学校が多いようです。
長野県だけではない!1970年代に全国に広がる
無言清掃はいつから始まり、どのような効果があるのでしょうか。学校の清掃について研究する京都女子大学発達教育学部特任教授・名誉教授の表真美さんに伺いました。表さんが無言清掃の実施校を調査した結果、長野県周辺に限らず、無言清掃は全国に存在していることがわかりました。表さんは愛媛県、長野県、福岡県、埼玉県などでの無言清掃の現場を調査しました。
「明確なデータはありませんが、北海道から九州まで無言清掃が存在することは確認できています。1970年代に同時発生的に広がったようです。どのように全国に広まったかは不明です。これまでの調査の結果、歴史的に継続して実施している事例、長野県を中心に広がる『自問教育』の理念に基づいて行われる事例、学校の『荒れ』を改善するために取り入れられた事例があることがわかりました。それぞれルーツは異なるようです」(表さん)
「自問教育」とは長野県の中学校で校長を務めた竹内隆夫氏が考案した独自の教育理論。「自問清掃」と名付けられた独特の掃除教育で清掃時間は心を磨く時間と考えます。
世界でも珍しい子どもの学校清掃は明治時代から
そもそも世界的に見ると子どもが学校を清掃する国は珍しく、欧米では業者が清掃するのが当たり前です。国内では東京都港区など業務委託に切り替える地域もありますが、大多数は児童生徒が取り組んでいます。いつから子どもたちによる学校清掃は続いているのでしょうか。
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