また、脳の「単純接触効果」といって、何度も触れたことのあるものには興味がわきやすくなることがあります。わが家では、学校で公民の授業が始まる前から、親子で一緒に新聞を広げて国会や選挙の仕組み、地方自治の役割などについて話し合っていました。テレビのニュースで国会の様子が流れたら「これは通常国会だね。臨時国会や特別国会はどんな時に開かれる?」といった会話も日常的にしていました。こうして何度も触れていると、まっさらな状態から勉強するより内容がすんなり頭に入っていくのです。

 もちろん、全科目に同じことができるわけではありません。算数とリアルな体験を結びつけるのは簡単ではないでしょう。でも、理科や社会は結びつけやすく、さまざまな体験をするなかから一つでも深くハマるものが見つかるといいと思います。

受験生のゲーム、スマホ。「だめ」と言わずにやめさせる方法

――記憶力と睡眠についても教えてください。受験生は塾の勉強や宿題などで睡眠時間を削るケースも少なくありません。一方で、記憶を定着させるには十分な睡眠時間が必要とも言われます。どのようにバランスをとったらよいのでしょうか?

 受験生の親のほとんどが悩む問題ですね。バランスをとることは極めて難しいのですが、一つ意識したいのはデジタルデバイスの使い方です。夜、塾から帰宅してからゲームやスマホを見ているとブルーライトの影響で脳が覚醒し、睡眠時間が短くなったり睡眠の質が下がったりします。睡眠不足になると勉強のパフォーマンスが落ち、メンタルヘルスにも影響することがあります。夜のデジタルデバイスの使用はできるだけ控えて、受験生でも7~8時間の睡眠は確保したいですね。

 また、勉強のあとにゲームやスマホをすると記憶が上書きされ、その前に覚えたことを忘れやすくなります。私は息子にゲームやスマホをするなとは一切言いませんでしたが、「こういう問題が起きるよ」という事実を伝えました。そうすると、せっかく勉強したことを忘れたらもったいないと思うんですよね。自分からやらない選択をとっていました。

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