きょうこ先生が「魔の月」と呼ぶ理由とは
――親子の間で、入試までの時間の感覚に“ギャップ”があるのですね。
親からすると、塾の宿題に過去問、テストの間違い直しだけじゃなく、弱点補強や頻出分野の対策もしたいし、暗記がまだ弱いからあと2周くらいは一問一答の問題集をやったほうがいいし……などと、子どもにやらせたいことがいっぱいある。なぜなら、10月、11月ならまだそれが全部できそうな気がするから。
でも子どもはというと、もうすでにいっぱいいっぱいで、入試はもう少し先のことのような気もしている。そんな状況の中で、親ばかりが焦って自分を制御できなくなってドッカーンと爆発してしまう。これを私は「魔の月」と呼んでいます。
――親も焦りやイライラが募って精神的にキツい時期なんですね。
そうですね。実は12月になると現実が見えてきて、親御さんもやるべきことの優先順位をつけられるようになるのですが、10月、11月は「まだ頑張ればあれもこれもできるんじゃないか」と思ってしまう。そこからくる焦りが一番強くなる時期なんです。塾の生活や、わが子の成績の伸びが見えない時期でもあり、見えないからこそ親御さんが頑張りすぎて肩に力が入ってしまうんです。「今やらないと間に合わない」「今ここで頑張れなかったらもう駄目だ」という焦燥と、「今頑張ったら何とかなる」という期待もすごくあると思います。
どうしてもわが子のこととなるとカーッとしてしまいますよね。この「魔の月」は、普段温厚な親御さんでも「自分の知らない自分」が出てくるような時期ではないかと思うんです。
この時期は「焦ってしまうものなんだ」と知っておいて
――これはどんな家庭でも起こることなんでしょうか?
起こりますね。わかりやすくドッカーンと爆発しているご家庭もあれば、一見すごく冷静にお子さんを見ていて、「子どもってこんなもんですよね」とか「優先順位をつけて睡眠もちゃんと取らせます」というふうにおっしゃるご家庭も、受験が終わってからお子さんに話を聞くと「あの時のママひどかったよ、先生にはああ言ってたけど塾にしょっちゅう電話してたよ」などと聞きます(笑)。またこの時期は、私もほかの先生方も、親御さんから長文の相談メールがとても沢山届きます。
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