私はオリンピックに出場することが最大の目標になっていたので、オリンピックに出場してメダルを獲得するという明確な目標を立て、本番にピークを合わせていた先輩方には敵いませんでした。このとき一緒にオリンピックで戦った方も含め、競泳の先輩から学んだことは本当にたくさんあります。

 今でも心に残っているのは、高校3年生のアジア大会で優勝したとき、2位になった先輩の中村真衣さんが泣き腫らした目で「おめでとう。一緒にオリンピックに行こうね」と声をかけてくれたこと。とても悔しかったはずなのに、そういうことを言える先輩が本当にかっこよくて「私もこんなふうに強くて優しい先輩になたりたい」と、心から思いました。

「オリンピックに出たなんて、すごい」とおっしゃってくださる方はいますが、私はひとりでは何もできない人間なんです。こうして改めて振り返ると、周りの人たちに恵まれてここまできたんだなぁと感じますね。

(構成/木下昌子)

後編<元競泳選手・萩原智子が小4息子の習い事に「口出ししない」と決めた理由 「監督の言葉にハッとしました」>へ続く

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木下昌子
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