中高一貫校は、学校独自のカリキュラムを学ぶことができるのが魅力の一つです。都内で中学受験塾「應修会」を主宰する茂山起龍(きりゅう)さんは、受験後も教え子たちと交流を続けるなかで、中学受験生たちの“その後”を見つめ続けています。AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。今回は、「美術」という軸で志望校を選んだ女子生徒のエピソードをご紹介します。

MENU 「美術が好き!」で第1志望校を決定 「国語」が得意だったことが大きな強みに 中高6年間で打ち込んだものが確かであれば、将来は開けてくる 学校独自の面白いカリキュラムやイベントを楽しめるのは、中高一貫校ならではの魅力

「美術が好き!」で第1志望校を決定

――何かを好きな気持ちは、中学受験をするうえで大きなモチベーションになります。その意味で強く印象に残っている生徒はいますか?

「美術」が好きで、美大の付属を第1志望にしていた生徒がいました。彼女が転塾してきたのは、小学6年の始めの頃。それまでは、公立の中高一貫校を目指し勉強していたそうですが、明確な目標を持てず、「なぜ公立の中高一貫校を目指しているのかわからなくなった」と言って、僕の塾にやってきました。

「カリキュラムに特色のある私立の中高一貫校を見つけたい」という、本人と保護者の意向を汲みながら志望校を考えるなかで、「面白そう」と本人が興味を示したのが女子美術大学付属中でした。

――もともと美術に強い興味を持っていたのでしょうか。

 僕の主観ではありますが、「小学生にしては上手い」とは感じていました。たとえば、理科の授業でメダカや植物の絵を描いたときは「上手に丁寧に描くな」と感じましたし、休み時間に好きな絵を自由に描いている様子を見ていても、絵が好きな気持ちは伝わってきました。女子美術大学付属中を第1志望に考えるようになってからは、成績が目に見えて伸びていきました。持ち偏差値を考えると、もっと上も目指せましたが、本人は「とにかくその学校に行きたい」という気持ちが強かったようです。

「国語」が得意だったことが大きな強みに

――成績が伸びた要因は何だと思いますか。

 第一は、明確な目標ができたこと。また能力面でいえば、「国語」が得意な生徒だったため、文章を読むのが苦ではなく、どんな科目であっても知識をどんどん吸収していけたことが大きかったと思います。国語が好きな生徒は、本や新聞を読むことで理解を深めていくことができますし、必要な情報を的確に読み取っていく力にも長けています。5年生までは公立の中高一貫校に特化した塾に通っていたため、社会と理科は深く学んでいないところからのスタートでしたが、「国語」が得意であったことは彼女にとって大きな強みとなりました。

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茂山起龍
中学受験塾「應修会」塾長 茂山起龍

しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama

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