名前を「よく聞く」学校に憧れていない?

矢萩:僕も大手塾で十数年教えていたんですが、どのレベルのクラスの生徒も、そういうブランド校というか有名校を目指したがるんですよね。それって単純接触効果みたいなものが大きいと思うんです。要は先生たちが口に出す学校名として一番多いということ。友達が言っている学校名としても多い。つまり、自分が行きたい学校ではなく、「よく聞く学校の名前」なんですよ。

安浪:塾にそれらの学校名とセットで合格者の名前が貼られていることもありますしね。やっぱり子どもにとって「御三家を目指している自分がかっこいい」っていうところもありますよね。

矢萩:逆に言うと中堅校であるとか他の学校の名前はあんまり聞かないし情報がないから目指しようがない、というのもありますね。だから偏差値に関係なくいろんな学校を見に行ってみて、ちゃんと足を使って体験させていかないと、子どもたちも偏った志望校選びをしてしまうかもしれないです。

安浪:今、質問者さんのご家庭で上がっている第1志望校は息子さんも納得していて、本当に行きたいとこなのかというところが、やっぱりすごく大事になってきますね。

矢萩:僕も神奈川の御三家と言われる学校に進学したんですけど不登校になりました。本当は僕自身が行きたかった学校があったのですが、距離が遠いからという理由で親が反対し、受験させてもらえなかったんですね。仕方ないので、塾も勧めているし比較的近かったその学校を受験したのですが、校風もよく知らないし、あまり興味がなかったんです。初めてその学校に行ったのは受験当日でした。それでも名前はすごく聞いてるし、みんなも受験するんだからいいか、とその流れに乗ってしまった自分がいるわけです。中学1年生の間はなんとか我慢できたんですが、中2なったときに、あまりに学校と合わなさすぎて行かなくなっちゃったんですが、今思えば学校も見ないで受験した自分も浅はかだったわけです。自分はここに行きたいってちゃんと自分で決めたのであれば、どんな結果になっても人生の糧にはなると思います。だけど、自分が決めてなくて誰かに言われたから受験した、みたいな感じだと、合格してもちょっと他人事感が出てきてしまうし、失敗したときは人のせいにしてしまう。ちゃんと自分で考えて決めるためには、絶対に根拠が必要です。だから学校もいろいろ見に行ってほしいし、過去問もちゃんと見てほしいです。

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