近視の矯正方法として話題になっている「オルソケラトロジー」。どのようなものなのでしょうか。近視の進行を抑える働きがあると聞きますが、本当でしょうか。日本眼科医会副会長で眼科専門医の柏井真理子医師に聞きました。
【図】オルソケラトロジーの治療の仕組みはこちらオルソケラトロジーは小学生でもできる?
Q オルソケラトロジーとは何でしょうか?
オルソケラトロジーとは特殊なカーブを持つハードコンタクトレンズ「オルソケラトロジー」を寝る前につけて、つまり就寝中にレンズを装用し黒目の形を変え、起床時にレンズを外し、日常の活動時の裸眼視力を向上させる治療です。アメリカで誕生し、日本では2009年にレンズが承認されたことから、徐々に普及してきました。
眼球の前後の長さ(眼軸)が長くなり、目の中に入った光線のピントが合う位置が、網膜より前になってしまうのが近視です。
「オルソケラトロジー」の持つ特殊なカーブが就寝中に角膜の形を平らにし、ピントを網膜に合わせます。角膜の形は最長12時間ほど維持されるため、朝起きてレンズを外した状態でも視力が矯正され、日中は一定時間、裸眼でよい視力で過ごすことが可能になります。
Q 小学生でも使うことができますか?
この治療は2017年まで、原則20歳以上に制限されていましたが、国内外の研究で有効性が確認されたことから、「慎重に処方すること」を条件に未成年にも治療が可能となり、現在、小学生にも広がっています。ただし、コンタクトレンズの取り外しや消毒などを保護者がしっかりサポートできることが前提です。
また、オルソケラトロジーは健康保険の適応ではありません。このため治療は医師の裁量によって行われ、全額自費負担、つまりお金のかかる治療法です。治療費は医療機関によって異なります。初年度にかかる費用は12万~32万円と幅があります。
Q オルソケラトロジーには近視の抑制効果があると聞きましたが、本当ですか?
日本を含む海外の研究でそのような報告がいくつか出てきていますが、まだ、十分なエビデンス(科学的根拠)があるとはいえません。
また、オルソケラトロジーは目に負担がかかりやすく、レンズのケアを慎重に行う必要があるなど、注意点もたくさんあります。メリットだけでなく、デメリットもよく知ったうえで使用を検討する必要があります。
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