咽頭(いんとう)結膜熱(プール熱)は手足口病やヘルパンギーナと並ぶ、夏風邪の代表格です。どのような病気なのでしょうか。プールで感染するというのは本当でしょうか。子どもの病気に詳しい川崎医科大学小児科学特任教授の中野貴司医師に聞きました。
【図】感染症の主な感染ルートはこちら咽頭結膜熱(プール熱)はどんな病気?
Q 咽頭結膜熱というのはどのような病気ですか?
アデノウイルスというウイルスが原因で起こる感染症で、幼児と小学生に多く見られます。アデノウイルスには非常に多くの型があり、型によって症状を引き起こす場所が違うという特徴があります。咽頭結膜熱はアデノウイルスのうち、のどと目の結膜(目の白い部分を覆っている膜)に症状を引き起こす型によって発症する病気です。主な症状はのどの痛みと結膜炎、39度以上の高熱です。
結膜炎では結膜の充血、涙が多くなる、まぶしがる、目やに、などがあります。目の痛みを訴えるお子さんもいます。一般的な結膜炎は感染が生じた片方の目だけに発症することが多いですが、咽頭結膜熱の場合は、もう片方の目にもウイルスがうつり、両目に症状が表れます。
首や後頭部のリンパ節がはれたり、「リンパ節の部分を押すと痛む」という症状が見られることもあります。
Q 熱はなく、「結膜の充血やかゆみだけ起こる」というケースもありますか?
その場合は咽頭結膜熱ではなく、アデノウイルスのほかの型によって起こる「流行性角結膜炎」が疑われます。流行性角結膜炎もプール熱と同様、夏に多い感染症で、のどの痛みや発熱はありません。
なお、アデノウイルスにはほかにも「肺炎」を引き起こすものや血尿をともなう「膀胱炎(ぼうこうえん)」(出血性膀胱炎)を引き起こすものなどが知られています。咽頭結膜熱のように集団発生することは少ないですが、知識として知っておくといいかもしれません。
プールでかかるの?
Q 咽頭結膜熱は、これまでプール熱と呼ばれていたと思います。
昔はプールの水を介して感染することが多かったため、「プール熱」と呼ばれていました。しかし、塩素消毒が徹底されていれば、感染の心配はなく、プールでの感染機会が大きく減ったのです。また、ゴーグルや水泳帽、タオルなどプールに入るときに使うあらゆるものが個人持ちとなったこともプールでの感染が減った理由です。
次のページへプールで感染するの?