おすすめポイント

 理由ははっきりとはわからないけど、「あの子が苦手」「あの子を見ているとイライラする」という負の感情。小学校にあがると、自分とはまったく違う性格や考え方の子たちとも一緒に集団生活を過ごさなければならないだけに、大なり小なりどんな子も抱いてしまう感情なのではないでしょうか。

 主人公のだいすけは、隣の席ののぶやくんを見ているとイライラしてしまいます。声が小さくて引っ込み思案な性格が合わないうえに、自分が大切にしているランドセルと同じものを持っていることも気に入りません。のぶやくんが大事な下敷きをなくしてしまっても、「ちゃんと しまっておかなかった、のぶやくんが わるいんだよ」ときつく当たってしまいます。その様子を見た仲良しのゆみかちゃんからは怒られ、放課後に遊ぶ約束もなくなって「ぜんぶ、のろのろのろやくんの せいだ」と、だいすけは不機嫌に。

『ながれぼしのランドセル』(フレーベル館)より

 話の前半では、自分のことばかりを考えるだいすけですが、のぶやくんの下敷きを傷つけてしまってからは、のぶやくんの気持ちを考えるようになっていきます。

 大事なものを傷つけてしまったのだから、のぶやくんはきっと怒っているし許せないだろう。もし自分が大切にしているランドセルを傷つけられたら、「じぶんだったら、ゆるせない!」。どうしたら許してもらえるのか、ひとりで必死に悩み考えます。

 だいすけが一生懸命考えて出した答えを、のぶやくんが受け止めてくれるラストにほっこり。下敷きにつけてしまった傷が、意外な形で2人の絆を結んでくれます。

 だいすけや、のぶやくんと一緒に、相手を思いやることの大切さ、友情について深く考えることができる物語。まっすぐで素直な2人の心を表しているかのような、コマツシンヤさんが描く挿絵のやさしいブルーも魅力的です。

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