小学生の5%、中学生の10%が発症していると言われる起立性調節障害。成長に伴う症状なので、高校生になるとほとんどが回復すると言われますが、治療をすれば早く治るのでしょうか。受診するメリットや治療について、昭和大学保健管理センター教授で、小児科専門医の田中大介医師に聞きました。
【チェックリスト】起立性調節障害のチェックリストはこちら病院を受診したほうがいい?
Q 起立性調節障害が疑われたら、病院を受診したほうがいいですか?
起立性調節障害は、軽症であれば診断や治療を受けなくても自然に回復していくことがあります。なかには起立性調節障害と気づかないままの場合もあります。しかし、適切に対応しなければ症状が悪化し、長引く可能性があります。また、症状の背景には、ほかの病気が隠れていることもあります。適切に対応するほか、ほかの病気を見逃さないためにも受診をおすすめします。
起立性調節障害がある子どもは「学習性無力感」といって、諦めの感情から無力感がつくられていくことがあります。どのようなことかと言うと、「学校に行きたい」という気持ちがあるのに行けないというように、自分の努力ではどうにもならないことが続くと、やがて何をしても無駄だと諦めの感情が生まれます。学習性無力感を生まないためには、早期に診断を受け、心理面のサポートも含め、適切に対応していくことが大事なのです。
Q 学校にはどう相談したらよいですか。
また、起立性調節障害は、周囲に理解されにくい病気です。例えば、学校で思うように動けないとき、骨折していれば誰でもすぐにわかりますが、起立性調節障害の場合は「もう少し頑張ってみよう」「気合を入れてみよう」などと言われたり、さらには、サボリ、怠けと誤解されることもあります。起立性調節障害の子どもは身体もつらいのですが、このような誤解は気持ちのうえで最もつらいことの一つです。私の外来でも、悔しそうに、悲しそうに、諦め気味に、ときには涙を流しながら話してくれることもあります。学校への診断書の提出は、子どもの状態を周囲に知らせて本人の居場所をつくる助けになります。学校には病気を理解してもらったうえで、学校生活のなかでの居場所づくり、学習面のフォロー、進路指導など、環境を調整してもらいます。
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