Q 起立性調節障害を治す薬はないのですか?

 特効薬はありませんが、血圧を上げる薬や脈を抑える薬、漢方薬が処方されることがあります。ただし、服薬だけで効果を得られるわけではありません。水分や塩分摂取、立ち上がりや姿勢の保ち方など非薬物療法に留意したり、日常生活の工夫や病気への理解が基本となります。精神的なケアが必要な場合には、カウンセリングを基本とした心理療法が有効なこともあります。

病気になったら、その後どうなるの?

Q 起立性調節障害になったら、その後どうなっていくのでしょうか。

 多くの場合は成長とともによくなっていきますが、登校できなくなったり、遅刻が続いたりしている場合、保護者としてはいつ時間割通りに学校に行けるようになるのかが気になるところではないでしょうか。しかし起立性調節障害で登校できなくなっている場合、1年後の回復は50%と言われ、長期的なサポートが必要です。

 発症から間もない時期は、つらさを抱えながらもこれまで通りの生活を続けようとして、疲れ切っている状態です。診断されたらできないことを取り戻そうとがんばるのではなく、学校ではなく、自分の体調に合った時間割をつくり、それに合わせて生活することを目標にします。調子がいいと感じる日が増えてきたら、週に1~2回午後から登校するというように、徐々に活動していきます。ただしオーバーワークは禁物です。急に元通りの生活を送ろうとせず、あえてブレーキをかけながら過ごすこともコツの一つです。

Q 高校生になっても回復しないケースはありますか?

 中学生のときに学校に通えていない場合、多くは高校生になってもしばらくは症状が続きます。ただし、高校生になると通信制や定時制高校など選択肢が増えていきます。自分の体調に合わせたリズムで高校生活を送ることがとても大切です。遅刻や欠席というストレスから解放され、表情は明るくなり、自分のやりたいことを少しずつ行い、高校生活をエンジョイすることが可能になります。そして、通信制高校を卒業し、その後大学に朝から通えるようになったという患者さんも少なくありません。一方、重症タイプは約1%いて、治療が長引いたり、改めて精密検査が必要になったりすることもあります。

 起立性調節障害の患者さんの経過は100人いると100通りであり、100通りの対応が必要になります。周囲の大人や社会が起立性調節障害を理解し、身体と心の両方から寄り添い、患者さんや家族の味方になってフォローすることを願ってやみません。

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