授業中に「目が死んで」いないか、親には見えない
矢萩:安浪さんが先ほどおっしゃった通り、小学生って興味関心がコロコロ変わったりします。それを前提にした上で「理科」というぐらいの抽象度の高さだったら、僕は別にいいのかな、と思っています。理科ってそもそも範囲はすごく広いですし、視点と方法次第で何にでもサイエンスになるので。
安浪:確かにそうですね。あとは受験勉強の難しさをどう乗り越えるかですね。受験勉強をやる以前だったら、「理科が好き」と目をキラキラ輝かせていたのに、大手進学塾のカリキュラムに乗って、毎週毎週復習テストをやって、という勉強をやっていると理科が嫌いになるってことがありますから。
矢萩:本当にその通りです。僕自身、以前は大手塾で教えていましたが、辞めた原因の中の一つは、子どもたちがやりたいことを失っていく過程が見えてしまったことです。大手塾だと一定のカリキュラムがあってテストで管理していかなければならないので、どうしてもそれに乗れない子が多くでてきてしまうんです。それって結構なディストピア(暗黒世界)感があるんですが、その現場は保護者には見えないんです。成績はわかっても、子どもたちが授業中に目を輝かせているのか、死んでいるのかといった情報に、直接触れにくい。
安浪:中学受験の勉強を始める前だったら、すごく好きな教科とそうでない教科、いい意味ででこぼこがある状態だったのに、塾に入るとでこぼこはダメなんですよね。なるべく高めにならしていくっていう作業になりますから、突出したものが去勢されてしまうことがありますね。
矢萩:僕の経験上、苦手なものは後回しにして、まずは好きなものを伸ばしたほうが伸びる生徒が多い。好きなこと、例えば理科で一点突破すれば勝手に算数と国語もできるようになるんですよ。理科の場合、知識だけでなく読解力や計算力も必要ですから、かなり相乗効果が期待できます。塾の方針的にそれが無理なら、先ほども言ったように、無理に4科受験をせずに2科受験などを目指したほうがいいかもしれない。目的と手段は別々に考えるべきですね。
(構成/教育エディター・江口祐子)