子どもにとって「最悪の虐待」とは何か?

高橋氏:ところで黒坂さんは、最も見逃されやすい、でも重大な虐待って何だと思いますか?

ーー無視でしょうか?

高橋氏:無視、無関心もそうなんですが、最悪の虐待は夫婦げんかです。

ーーえっ?

高橋氏:これ、意外とみなさん知らないんですよ。最も重大な虐待は、子どもの面前で両親が激しい言い争いをしたり、父親が母親を殴ったりすること、あるいはその逆ですね。子どもは両親の不仲を目にするよりは、自分が殴られたほうがいいとさえ思っているかもしれません。ですから子育ての意見が違ったときにも、子どもの面前での口論は避けてくださいね。

ーー夫婦で意見は違ってもいいけれど、それが夫婦げんかに発展してしまうと、子どもにとっては最悪の虐待になる、と。

高橋氏:さて、ここで話を戻しますが、発達障害の子を育てるときに大切なのは、本人を変えようとしないこと、これに尽きます。例えばASDの治療というのは、本人ではなく、周りを変えることなんです。必要になったときに、その時々の困難さに合わせて環境を整えるんですね。その意味においても、2歳や3歳で慌てて診断を付ける必要はないのです。だから僕は「グレーゾーン」という言葉も、まず使わないんですよ。

ーー「グレーゾーン」は、発達障害に関連してよく使われる言葉で、一般的には、診断までいかないけれどその傾向があるという意味で使われています。

高橋氏:例えば「ASD」は、日本語にすると「自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)」ですね。この「スペクトラム」という言い回しは濃淡、グラデーションということ、つまり症状の程度は重いものから軽いものまで様々ある、という意味です。ですからこの名前が用いられた時点で、もうそのなかにグレーゾーンが含まれていると考えることができます。ですからあえて「グレーゾーン」と呼ぶことに意味があるのかどうか。

 子どもの発達障害とは、「発達が進むに従って、次第に明らかになってくる日常生活上の困難さ」であり、「2歳や3歳のお子さんに、確定診断をするのは難しい」ということは、これまでにお伝えしてきた通りです。

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