安浪:選択肢って何をもっての選択肢なのかな、という疑問はあるのですが、たぶんこの文脈でいうと、大学を選べるっていう意味での選択肢なのかなと思います。つまり学力勝負の選択肢が広がる、という。でも今は総合型選抜や推薦型選抜で入学する生徒が半分以上ですからね。学力ガチンコ勝負のところはむしろ減っていっているので、そこにこだわるのもどうなのかな、という気はします。
矢萩:時代の流れでもう一つ付け加えると、現在は「超売り手市場」なので、高卒であっても大企業からのオファーは少なくありません。僕自身、専門高校などにも関わっているのですが、以前だったらありえない状況で求人が来ています。待遇だって大卒と比べてすごく悪いわけではない。もちろん、いまだに学閥のようなものがあったり、学歴を重視する企業もあったりするのでそういう企業に就職したいなら別ですが、そこまででないなら、今は個人の才能と努力でいくらでも選択肢は広がります。
■偏差値の問題ではない
安浪:あとお友達からの刺激ですが、これもどういう刺激を受けたい?というところですよね。偏差値が高い学校に行ったら国際オリンピックの数学だの物理だので受賞しました、というような子はそりゃあいますよ。でもそれがお子さんにとって刺激になるかどうか?子どもによって何が良い刺激になるのかは全然違います。結局一緒にいるお友達のどんなところにどこまで目を向けられるかっていうのは本人次第のところもありますし。
矢萩:もちろん、じゃあ中堅校のほうが選択肢があるのかと言えば、そういうわけでもなくて、学校によっては難関校よりも受験勉強に時間を割くので、やりたいことが見つからないまま卒業してしまった、なんて声も聞きます。つまり、偏差値の問題ではないんです。
安浪:たぶんこの質問者さんがイメージしていることは、例えば何か一つ話題にするにしても、偏差値の高い学校の子のほうがいろんなことを深く知ってるんじゃないか、深い話ができるんじゃないかという点かなと思うんですけど、受験勉強で勉強が得意なことと、自分が興味あることを深掘りしていることって、全然話が違うんです。
次のページへ新しい学びに転換できない偏差値上位校も