矢萩:先ほど、今は総合型、推薦型選抜が大学入試の半分以上を占める、という話が出ましたが、現実としては総合型選抜で大学にいくのは中堅校の子が多いです。逆にいうと高偏差値帯の学校のほうが従来型の勉強法に引っ張られている傾向もあるわけなんです。

安浪京子さん

■新しい学びに転換できない偏差値上位校も

安浪:それはやはり一般選抜のほうが指導しやすいからですよね。

矢萩:おっしゃる通りです。一般選抜でガリガリやらせる方法しか実績がない学校としては、進学実績の数字は確実に取っていきたいので、現状数の読みにくい総合型選抜より一般選抜をすすめるわけです。ある偏差値上位校の校長から話を聞いたのですが、探究型の学びを取り入れたいけれど、保護者はあくまで大学合格実績を期待していること、教職員の実力が伴わないことを理由に新しい学びに転換するのは難しいと言っていました。うちは従来型の学びなら実績もあるし、自信もあるのでこのままでいくと。

安浪: 以前、中学受験の時にカウンセリングをした子が難関校に進学したんですが、数学が苦手だから良い塾がないかと高校1年の時に相談されて。状況を聞いてみると、中1の内容まで戻らないといけないから、塾よりも家庭教師のほうがいいですよ、とアドバイスしたんですね。もっとも、そこまで数学が苦手なら数学なしで受験できる大学にすればいいじゃない、と言ったのですが、今の学校はそういう指導をしていないからそれはムリ、と言っていて。まさに選択肢を狭めているな、と思いました。

矢萩:もちろん、従来型の学びにもメリットはありますし、それはそれで意味があるからこそ主流派だったわけです。だから、従来型のほうが相性がいいなら、そのまま突き進めばいいと思います。問題はそれに合わない場合の選択肢があまりなかったことなんです。今はオルタナティブというか、ようやくいろいろな選択肢が出てきて、従来型の学びじゃないほうに才能があるとか、興味、関心がある子たちも入試の選択ができるようになったんですね。そこをポジティブに捉えたほうがいいと思います。

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