矢萩:このご相談は、マルかバツかみたいな評価をしない比較的自由なタイプの学校に通っているのに、中学受験で塾に通い始めてからマルバツをつけられるようになって、それを嫌がってやる気をなくしているのでどうしたらよいか、ということでしょうか。

■少しずつ階段を昇って行かないと

安浪: そうですね。マルバツがない、ということは学校では本人が考えたりやったりしたことは全て評価してくれているんでしょうね。そういう環境にいたのに、突然自分が言ったりやったりしたことにバツがつく環境に戸惑っているのかもしれません。

矢萩:こういうタイプの子は、僕が関わっているなかだとフリースクールに多いパターンです。主体的に何かをやったり、学んだりすることはすごく好きだけど、それに対してマルとかバツをつけられるのは嫌だ。美術の授業に点数や評価をつけられるのは腹が立つ、といった感じと似ているかもしれません。

安浪:なぜフリースクールだとそうなるんですか。

矢萩:好きなようにやらせてあげることは大事なことなのですが、自由にやっていることばかりを評価しすぎてしまうと、他者からの指示や評価を受け入れにくくなってしまうことがあるんです。そのような状態で、急にドリルや問題集を渡しても拒絶されてしまいます。もちろん、そういうことにも慣れる必要がありますし、繰り返しやトレーニングでできるようになることも必要な学びの経験ですから意味はあるのですが、うまくいかない場合は、たいてい最初から量が多すぎるんです。まずは一つ教えて一つマルになったら一つ知識が増えたね、君は問題一個分レベルアップしたね、というように小さいところから積み重ねていけば、やったらやった分だけできるようになるんだな、という感覚がついていきます。そんなふうに少しずつ階段を昇っていかないとこの問題って解決しないと思うんです。

安浪: なるほど。たしかにドリルや塾のプリントは、一方的に与えられるものですし、量がすごいですもんね。

矢萩:ただ、多くのフリースクールは、居場所感や自己肯定感を最も大事にしているので、カリキュラムがあって決まったコンテンツをやらせたり、スキルアップを目指すような時間は少ない傾向があります。

安浪:フリースクールは良くも悪くも居心地が良すぎてしまう。

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