よしおにはなかなかない悩みだったから、周りの人たちの経験を聞いてみたよ。よしおの後輩の女の子の学校にはボス的存在の子がいたんだって。そのボスの前ではその場にいない子の悪口を言うのが当たり前だったらしい。だから、自分も言われていただろうし、そのボスがいないときはみんなでボスの悪口を言っていたって話してくれたよ。

 その話を聞いて、「おお、そんなことがあるのかあ」って思ったんだけど、ある後輩の妹も小学生のときは「悪口を言われる順番は必ず回ってくるもの」って思っていたらしい。それを聞いて、「もしかしてこれは女子あるあるなのかなあ」って思ったんだ。

 じゃあその後どうなったのか後輩の女の子に聞いたら、中学生になって、「悪口って言っちゃいけないものなんだな」って分別がつくようになったっていうんだ。小学生のときは自主性があまり培われていなかったから、周りに流されるように悪気なく悪口を言っていた感覚だったんだって。ほくろがあったらただ「ほくろ」って言うみたいな。

 小学生から中学生になるくらいって、心には大きな変化があるんだなあ、って思った。きっとゆめみちゃんはその真っただ中にいるのかも。だから、ひとつ言えることは、この変換期に「そんなの関係ねえ!」の心を育ててほしいな、ってこと。

 ある日よしおが飛行機に乗っていたら、隣に座っていたお坊さんに「“そんなの関係ねえ!”って、仏教ですよね」って話しかけられたことがあるんだ。「どういうことですか?」って話を聞いたら、「人からよく見られたいとか、人からよく見られようとすることを自我といいます。その思いを断ち切るのが“そんなの関係ねえ!”ですよね」って。よしおは思わず「そうなんですよねえ!」って言っちゃったんだけど(笑)、すごくいい意味だな、って思ったんだ。ゆめみちゃんは周りのことがすごく気になっちゃっている状況だと思うから、ぜひ「そんなの関係ねえ!」を心に持っておいてほしいな。

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