現在小2の次男は宵越しの金は持たねぇ、よく言えば江戸っ子精神、まぁ要は有り金はすべて使い切ることに快感を覚えるタイプ(末恐ろしい)。そんな彼は幼い頃から魚を見るのも食べるのも好きで、近所のお魚屋さんで自分のお金で一尾買いするのが夢でした。

 私はお恥ずかしながら三枚おろしもできないし魚料理はニオイも気になるし後処理も正直めんどくさくて、ずっと次男の希望をうやむやにごまかしてきました。しかしチャンスは突然に。

 ある日の夕飯の副菜に困り、次男におつかいを頼んだんです。千円以内で、お魚屋さんで売っているお惣菜を買ってきて、と。大張り切りで飛び出して行った次男、唐揚げや南蛮漬け、煮つけなどが目の前のカウンターに並ぶ中、この機を確実に逃すことなく、見事にお店の人を味方につけて夢を叶えてしまいました。

 そう、千円ぴったりで買える鯛を見つけて刺身用にさばいてもらい、あらまでもらって帰ってきたんです。結果、メイン(ハンバーグ)の他にまるっと一匹分の鯛のお刺身、更にあら汁までできてしまって、同じ金額でも当初の私の想定よりもずっと豪華な(しかしジャンル不明の)夕食になってちょっと母は立場をなくしたのでした……。

 そんな実話を描いたところ、編集さんから意外な感想をもらいました。

「次男くんって、一見我が強くて自分の希望を押し通しているように見えて、実はすごく家族思いなんだと思いますよ」

 えー! あのわがまま息子のどんなところにそんなポジティブな印象が!?

「自分が買いたい、食べたいのも本当だけど、自分の希望を叶えた先に家族のみんなが喜んでくれる、笑顔の楽しいイメージがあるから自信をもって押し通すんじゃないかしら。ベースには喜ばせたいって気持ちがあると思いました」

 なるほど、確かにその日の夕食は、夫が「今日はなんか良い事でもあったの!?」と驚き、次男が帰り際に会った友だちと刺身抱えたままサッカーしていたというハプニング(?)も交えて、まったく話題に事欠かない子だよ!と食卓での会話がいつもより弾んだことを思い出しました。

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